隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
忘年会も盛り上がって来た頃、小原が退職の挨拶のため、他のテーブルにビールを持って移動すると、小原の部下たち3人が、社長のグラスにビールを注ぎにやって来た。
「小原主任が辞めた後を継ぐのは、この3人です」
博之は社長にこう紹介した。
「そうか、彼女一人でよくやっていたと聞いてるから、来年から責任重大だよ」
「えー? 私らには無理ですよ」
3人は暗い表情になっている。
「大丈夫だって、もう引継ぎは完了しているはずだから、どんどん仕事振って行くからな」
3人は更に「ええー!」という表情になった。
「おいおい。今からプレッシャー与えてどうするんだ」
「そんなに構えなくっても大丈夫だよ。でもやっぱり、小原主任のおかげで、業務管理がしっかり出来ていた部分は大きいし、それを君たち3人に任せるのは僕の方針だから、僕も責任もってフォローして行くし、分からないことは何でも聞いていいから」
「はい。でも、3人のうち誰がどこまで担当するとか、まだ振り分けがよく分からないんですよね」
「担当とか分けるつもりはないよ。全部出来るようになって(笑)」
「ええー。むちゃくちゃ難しいですよ」
「今はね。でも完璧にこなしてもらうよ」
「ひー。プレッシャー」
「おいおい。だからプレッシャーかけてやるなって」
社長も笑いながら、もう一度言った。
「でもやっぱり仕事では、大体出来たっていうのはNGで、いつも100点満点を取らないと完了しないから、学校のテストみたいに及第点なんて存在しないんだよ。だから、分からないことは僕がフォローする。いつも相談しながら仕事を進めるようにして下さい」
「私ら3人だけで話し合っても出来そうにないから、心配だったんですけど、部長に手伝ってもらえるんだったら」
「部長が手伝うって、代わりに作業してもらえるわけじゃないぞ。君らに正しい指示をしてもらうってことだぞ。それでうまく行かなかったら、木田部長の責任てことにすればいい。ははは」
「うん。そのつもりだよ。だから、これからは、僕の力になってくれ(頼む、頼む、ほら頼む!)」
3人は顔を見合わせて、
「でもやっぱり自信ないです〜」
そこへ、小原が戻って来た。