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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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第10章 忘年会



「それでは皆さん、一年間のご苦労をねぎらって、・・・乾杯!」
「カンパーーイ!!!」
 忘年会の席で博之が乾杯の音頭を取った。出席者に商品券入りの封筒が配られたすぐ後だったので、皆嬉しそうに大声で乾杯した。
 皆と代わるがわるグラスをコチンとしながら、博之はそわそわしている。というのも博之の隣の座布団が空席のままだったからだ。社長とテーブルの角向かいに座り、そんな博之の隣に座りたがる社員などいるはずもなかった。一番人気のない席ということなのだが、その空席は遅刻して来る小原のために、残された格好になってしまっている。

 皆が飲み始めて、鍋に火が入れられた頃、小原が会場にやって来た。社長が気付き、手招きするのを見て、博之は振り向き、その気合の入った化粧に驚いた。
「なんだそれ、化粧に時間がかかったんだな」
「はい。思いっきり作ってきました」
付けマで、ばさばさ瞬きしながら、最高の笑顔を作る小原は、博之の隣に来て、
「この席、空いてますか?」
「ああ。もうここしか空いてない」
「社長の前、特等席じゃないですか」
まさにこんな対応が、小原ならではのものだった。
「小原主任にも、これ渡さんとな」
社長が封筒を差し出すと、
「なんすか? これ」
「皆への感謝の印で」
「現金ですか?」
「商品券だよ」
「マジですか?」
早速開けてしまう小原。
「開けたのお前だけだよ」
「おお、いいんですか? 私辞めるのに、1万円入ってます」
「少ないけど、皆に還元した」
「年末は何かと物入りで、助かります。ありがとうございます」
小原は社長に笑顔で言った。
「それは、木田部長の気持ちだからね」
「ありがとうございます。嬉しいです。・・・また気を使ってますね」
小原は博之に小声で言った。