隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「拓君に・・・連絡しなくちゃ」
スマホを探そうとする愛音。
「バッグは、ここにあるけど、電話は俺がしとくから」
そして博之は、愛音の自宅に電話をした。
「・・・きっと・・・出ない・かも・・・」
愛音は片目を開けて言った。博之は電話を耳に当てたまま、
「もう10時だぞ。帰ってるだろう」
呼び出し音は鳴っているものの、相手は出なかった。
「・・・拓君、うちの電話・・・にも、絶対出ないから」
「なんでだ。本当に何にもしないやつなんだな」
「私が、かける・・・」
愛音は両目を開けて、バッグに手を伸ばした。博之はそのバッグを開いて、愛音のスマホを取り出して渡した。愛音は目を細めながら、スマホを操作し、拓君に電話をかけた。暫くして、
「もしもし? どうして電話に出ないのよ。・・・・・・今、木田さんの家。・・・・・・うん。・・・うん。・・・無理!・・・無理無理!・・・・・・チンしたら食べられるようにしておいたし・・・・・・うん。・・・・・・うん」
「何の話してるんだ。愛音、代わろうか?」
何やら的外れな会話を続ける愛音から、スマホを取り上げて、博之は、
「拓君、木田です。・・・ごめんね。今日食事に連れて行ったんだけど、飲んでたら急に体調が悪くなってしまって、立ち上がれないくらいなんだ」
「立てるよ・・・」
「それで今日は、うちに泊まって行ってもらおうと思うんだ。・・・うん。分かりました」
「代わって・・・」
「よろしくお願いしますって」
博之は愛音にスマホを返した。
「・・・気持ち悪いの!・・・もう分かってるでしょ」
「ケンカするなよ」
「はい、じゃ、おやすみ。・・・バイバイ」
愛音が電話を切ると、知子は水のグラスを手渡した。