隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「大丈夫だよ。ちょっと飲みすぎて気分が悪くなっただけだから」
博之は秋日子をリビングに連れて行った。
「今日泊まるの?」
「そうだね。泊まって行った方がいいな」
「じゃ、私の部屋に泊まらせてあげて」
「あきの部屋じゃ狭いよ。2階の和室で寝てもらうから」
秋日子は、いつも優しい愛音のことが大好きだったが、その血の繋がりに付いてはまだ知らされていなかった。
リビングで待っていると、知子の呼ぶ声が聞こえて来た。
「あなた、ちょっと来てくれる?」
博之は急いでトイレに向かった。
「ソファに運んで」
「ああ。愛音、歩けるか?」
「うん。大丈夫」
愛音は立ち上がろうとしたが、バランスを崩してトイレの壁に頭を打ち付けた。
「だめよ。抱き上げて」
知子は慌てて博之に言った。そして博之は、愛音を抱きかかえてリビングへ向かった。
「軽いな」
愛音は半分目を瞑ったまま、無言で運ばれている。
「ソファに寝転がる方がいいか?」
「・・・座る」
「お姉ちゃん・・・。大丈夫?」
「あきちゃん。こんばんわ」
「うん」
愛音は、薄目を開けて無表情でソファに座った。秋日子は心配そうな顔をしている。
「酔っ払ったら気分が悪くなって、余裕なくなっちゃうから、そっとしてあげてね」
「愛音、今日は泊まっていけ」
「ううん。帰る」
「こんな状態じゃ無理よ」
グラスに水を汲もうと、キッチンに向かった知子も、歩きながら心配そうに言った。