隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
第9章 体調の変化
「愛ちゃん。大丈夫? もう! こんなに飲ませて」
知子が電話で呼び出され、自宅から車で迎えに来ていた。
「自分で飲んだんだよ。さっきまでは大丈夫だったんだけど」
雪が降り積もるビストロの玄関前で、うずくまる愛音に博之は焦っている。
その晩、愛音は、自分を失うほど酔っぱらった。博之は駅まで送るつもりだったが、どう考えても一人で電車で帰すわけには行かない。特に今日はかなり傷心しているようだったから。
「後ろに乗せて」
「知子さん。すみません・・・」
「いいから、楽にしてて、家まですぐだから」
知子が運転する車の後部座席に博之は座り、愛音を膝の上に横たわらせた状態で介抱した。
「気持ち悪くないか?」
「う・ん?・・・・・・・・・・」
「おい。大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・」
知子は後ろを振り返りながら、
「急性アルコール中毒じゃない? 病院連れて行った方がいいんじゃないの?」
「まさか、お酒は強いはずなんだけどな。いろいろ心労が重なったみたいだから、体調良くなかったのかも」
「吐くんだったら、この袋使って」
知子は片手でハンドルを握りながら、コンソールボックスに入れていたレジ袋を取り出した。
「愛音、吐きそう?」
「・・う・ん」
博之の自宅に着くなり、愛音はトイレに駆け込んで吐いた。その足取りは、博之が抱えていないと立っていられないほど、ふらついている。
「あなた、あっちに行ってて。後は私が付いてるから」
その騒ぎを聞きつけて、秋日子も2階から降りて来た。
「パパ、どうしたの?」
と、博之に聞くと、
「ああ、愛ちゃんが酔っ払っちゃって」
「お姉ちゃん。来てるの?」
秋日子は少し嬉しそうに言ったが、トイレのドアが開いたままで、母親が介抱する姿を見て、近寄るのをやめた。