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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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 店に着くまで、二人はあまり喋らなかった。店のガレージに車を停めると、店主の奥さんが見送りのため、客に傘を差して出て来ていた。博之が車を降りると、
「いつものベンツじゃないから、分かりませんでしたよ」
と言いながら近付いて来て、助手席側に回った。
「会社の帰りで、社用車で来ちゃいました」
「あ、じゃ、部下の方?」
奥さんはそう言うと、愛音をその傘に入れてくれた。
「そうじゃないです。えっと・・・」
こんな時はいつも、単に自分のピアノ講師だと言うことにしている。

 店内に入ると、二人はカウンター席に案内された。
「うわ、この肉すごー」
愛音は、カウンター席の傍らに置かれた大きな豚の足を見て言うと、店の奥さんが、
「イベリコ豚の生ハムですよ。いかがですか?」
愛音は、博之を見た。博之は微笑んで、
「じゃ生ハム頂戴」
「ワインは、いつものカベルネの赤ですね」
「ああ、お任せで」
博之はいつも、ワインアドバイザーの資格を持つ彼女に任せるようにしているのだ。
「また車置いて帰っていいですか?」
「もちろんです」
「ありがとう。奥さん」
博之はこの女性を奥さんと呼んでいる。ママと呼ぶには少し品が良すぎる女性で、少し低音の落ち着いたかすれ声が魅力的だった。ご主人はこの店のオーナーシェフで、常に厨房に入っていて、博之は言葉を交わしたことはほとんどない。
「ねえ、パパのお勧めは何?」
「コース料理より、アラカルトで何品か頼んでみる?」
「その方がいい」
 博之は、『スズキと水ダコのカルパッチョ 和風サラダ仕立て』『地鶏もも肉の自家菜園ハーブソテー』と、『地元で採れた西洋野菜の炭火グリル』を注文した。
「寒いからスープも飲みたい」
「ああ。奥さん。今日のスープ何?」
「『塩トマトのミネストローネ』です」
「じゃボウルでひとつ」
「かしこまりました。お取り分けで」