隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
その晩も小原とのミーティング(愚痴会)を開催した。でもこの日はいつもの仕事上の愚痴ではない。
「愛音さんが、別れそうなんですか?」
「いやあ、本人がそう言ってるわけじゃないけど、俺はそういう気がするんだよ。結納する家族が居ないって言われたことが、相当ショックだったみたい」
「それはキツイこと言いますね。それ絶対わざとですよ」
「たまたま言葉の綾かも知れないけど、本人は傷付くよな」
愛音本人だけじゃない、本当は博之もかなり腹が立っていた。
「確か34歳ですよね。別れて、急いで他の人探すべきですね」
「そんなに簡単に行かないよ。あいつは結構奥手だと思うし。小原はそういう行動早いかも知れないけど」
「私は身持ち固いですよ」
「ほお。結構経験してそうだよ。してないって言っても正直信じない」
博之もすぐに次の行動に移す方だった。結婚を機に落ち着いたとは言え、女性に手を出さないまでも、歯に衣着せぬ話し方で、相手の秘密をどんどん引き出して行くのがうまかった。
「木田さんも、そっちは得意ですか?」
「そっちってなんだよ」
「そちらこそ、そういう行動って何のことですか?」
博之は少し可笑しくなって、にやけ顔で話し始めた。
「通ってた大学の職員さんの話、前にしたことあっただろ」
「ええ、いろいろな面でお世話になったって方ですよね」
小原も不敵な笑みを浮かべた。
「俺ね、大学の頃、その女性に弄ばれてたんだよ。大分年上の人で、俺は好きとか付き合いたいとかじゃなくって、刺激的だったから近寄ってたんだ」
「肉体関係とかは?」
「その人とはなかったよ。でも、結構俺のこと可愛がってくれて、しょっちゅう奢ってもらってたから離れられなくって、そのうちに、その人のすごい秘密とか教えてくれるようになって来て、その頃、可愛い女は皆ずるいなって知ったんだ」
「ああ。意味がなんとなく解かります」
「お前もそんな感じに見える」
「ずるい女にですか?」