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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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エピローグ



 薄暗い食堂の中。いつもと同じ娯楽コーナーのソファ席。いつもと同じ1メートルの距離。外に聞こえないように、いつもどおり小声で話した。しかし、博之と小原、二人の会話はいつものようには弾まなかった。
「長い間お世話になりました」
「こちらこそありがとう」
「ご迷惑も・・・」
「こっちこそ、きつく当たったりして・・・」
「いやなことは忘れる質なので・・・」
「じゃ、元気で。・・・またね」

・・・・・・博之が立ち上がろうとすると、

「最後に、・・・握手してください!」

小原はサッと両手を出した。博之はハッと躊躇い、考える間もなくそれに応じた。そしてその手を握りながら、
(やっぱり、俺と同じ気持ちだ。きっと)
そして博之、ついに思い切った一言を。

「抱きしめてもいいですか?」

「はい!」

間髪入れずそう答えた小原に、博之は両手を伸ばし、即座に彼女を引き寄せた。そして自分の胸に顔をうずめて来るこの美しい女性を、出来る限りやさしく抱きしめ、劣情に押し流されないよう気を引き締めながら、その小さな頭から肩を、数回撫で下ろした・・・。


 博之の帰宅途中、愛音から電話がかかって来た。小原と楽しい会話をした後に、愛音から電話があるのはもう珍しくなかった。小原との会話の余韻を楽しむのを、邪魔されるのにも慣れた。
「もしもし、どーした?」
[今日ね。拓君が家の鍵、返しに来てくれたの]
「あ、そう。よかったじゃない」
[車のお金も、毎月ちゃんと払ってくれるって]
「へえ? どうして心入れ替えたのかな?」
[私、赤ちゃんのこと、拓君に言っちゃった。それからパパとの本当の関係も]
「ちゃんと話し合えたみたいだな」
[そのうち、拓君とやり直せる予感がするわ]
「・・・・・・」
[どうしたの? 元気ないね]
「小原が最終日だったんだ」
[それで悲しんでるのか]
「ま、そういうこと」
[うまく行ってたんじゃないの?]
「そうだよ」
[でもあの人、パパの愛人じゃないでしょ]
「どうして違うと思う?」
[遠慮し合ってるように見えたもん]
「そうか。そういう関係だ」
[小原さんもきっと変化するよ。それまで平穏な日々が続くといいね]
「・・・そうだな。愛音、また俺にピアノ教えてくれるか・・・」


     完