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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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「お願いだ! 話をさせてくれ!」
「分かったから。手が痛いから」
拓君は立ち上り、手を引っ張って、ソファの右側に愛音を無理やり座らせた。エアコンが『サー』と音を立てて、狭い部屋に温かい風を送り始めた。
「そんなに力入れなくっても、話聞いてあげるから」
「俺、俺、今まで色々考えたんだけど! 考えたんだけど、やっぱり、愛ちゃんと別れるなんてダメなんだ」
「拓君。それだったら、もっと早く考えてほしかったわ。もう、今からじゃ遅すぎるのよ」
「今なら、やり直せるはずだ。ついこの前まで、仲良くしてたじゃないか?」
「それは、私が我慢して来たからなのよ。拓君のこと、嫌いになったわけじゃないの。でも、こんな我慢を一生続けられないと思ったの」
「俺、変わるから。愛ちゃんの言う通りにするから」
拓君は力一杯、愛音を引き寄せ抱きしめた。その瞬間、愛音の心は揺らいだ。少し前まで、腕を背中に回していた感覚が蘇って、涙が出そうになり、冷静に考える余裕が欲しかった。
「拓君、お願い、やめて・・・」
強い声で言った。それを聞いた拓君は少し体を離して、愛音の顔を見て、
「愛ちゃん!」
目を潤ませる愛音にキスを迫った。不意のキスを愛音は避け切れなかった。一瞬どうしようか迷った後、首を右に逸らせて、唇を離そうとしたが、拓君の力には敵わない。
「ん、むmm!」
拓君は、愛音をソファに押し倒し、体をまさぐり始めた。
「愛! 好きなんだ! 愛してるよ!」
「やめて! 拓君! だめよ! やめてって!」
愛音は必死で抵抗した。叫び声を上げようかと思ったが、すでに下着に手をかけられてしまった。玄関までのドアは全部開けたまま、声が外に漏れるのも気になる。ただただ拒否するしかなかった。冷え切った部屋の中で、拓君の暴力的な愛に戸惑いながら、涙は堪えられなかった。
(無理やり抱かれるのが嫌なんじゃない。愛してたはずなのに、結婚するはずだったのに、こんなことになったのは、ほんの少しのすれ違いだけ)しかし、後戻りする気など沸いて来かなかった。そんな気持ちでいることが、愛音はとても悲しかった。