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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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 1月20日は、秋日子の合格発表の日だった。博之はこの日も休日出勤はせずともよかった。
 家族3人で自宅を出て、発表の午前10時に間に合うように会場へ車で急いだが、この日も周辺駐車場に空きはなく、時間より少し遅れて県立中学に到着した。その途中では、すでに合否結果を確認した生徒や父兄が、前から歩いて来た。
 嬉しそうに話す子。
 電話で結果報告しながら歩く子。
 半べそをかいた子。
 いろんな表情をした子達とすれ違うと、秋日子もさすがに言葉少なになって来て、笑顔もなくなって行った。博之は涼しい表情をしていたが、それは無理に作った表情で、自分が子供の頃体験した何とも言えない不安感を、思い出さずにはいられない状態だった。

「どんな結果でも、大丈夫だから、心配しなくていいからね」
知子は、優しく声をかけたが、博之は、
「落ちてたら、今から私立も受験したらいいぞ(笑)」
「落ちるとか、言わないでよ」
「あれあれ? 自信たっぷりだったんじゃないのか?」
「あなた! そうだったんだけど、昨日学校のホームページに試験問題が掲載されて、それで確認してたら、算数でとんでもない勘違いをしたみたいで、昨日から落ち込んでるのよ」
「そうだったのか。何点ぐらい落としたんだ?」
「配点は発表されてないから分からない」
「きっと大丈夫だよ」
「でも大っきな問題の一つ目だったから、その後も間違ってて・・・」
「お前は内申点がいいから、大丈夫だと思うけどな」

 校門を入り、合格番号が貼り出された看板が遠くに見えた。大勢がその周りを取り囲んでいる。秋日子の足取りが速くなったり、遅くなったりした。完全に動揺しているのが分かる。博之は秋日子なら絶対に受かると思っていたが、この直前に爆弾を抱えていると知って、不安も大きくなって来た。

 競争率11倍、県下一の公立進学校。中高一貫教育で、東大、京大への進学者も多い。3人は急ぎ足で受験番号が掲示されている看板に近付いた。博之は3人の中では一番視力がいいので、遠くからでも歩きながら貼り出された受験番号を探した。しかし、娘の番号を見付けることが出来なかった。