隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「カバンに入れてる」
「もう、腕にしときなさい。お腹は大丈夫? アンパンもう1個食べとく?」
「いらない」
秋日子がリュックのファスナーを開けて、内ポケットから白いデジタル時計を取り出した。
「あれ?・・・」
「どうしたの?」
車内に不穏な空気が流れた。
「電池切れてる。点いてない」
「えっ! なんで? 昨日確認しなかったの?」
「見てなかった」
「それこそアホじゃない」
「まだ、電気屋さん開いてないですよね」
「電池だったら、コンビニで買えるから」
「交換出来ますか?」
「・・・・・・」
「どうしよう」
秋日子が不安な表情になった。
「大丈夫よ。お姉ちゃんがしてる時計貸してあげる」
愛音は赤信号で停車したタイミングで、左腕の薄ピンクの腕時計を外した。それを秋日子に渡して、
「針小さいけど、読み取れる?」
秋日子は文字盤をしっかりと見て、
「うん、大丈夫」
「腕にはめてみて。サイズはいい?」
秋日子は金属のベルトに腕を通して、ホックをスナップオンしてみると、
「ちょっとごそごそ(笑)」
「あ、でもそれくらいだったら見た目も大丈夫よ。愛ちゃんにお礼言いなさい」
「お姉ちゃんありがとう」
「いいのよ、お姉ちゃんも、あきちゃんの助けになれて嬉しいわ」
PPPPPPPPPPPPP・・・・・・
「あ、パパからよ。出る?」
知子はスマホを見て秋日子に言った。
「うん。・・・もしもし?」