隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「私も可愛がってもらえて嬉しいんです」
「可愛がってる・・・いろんな意味で」
「ヨシヨシとか」
「ははは。またいつでも」
「その時はお願いします。でも、愛音さんともすごく仲いいんですね。ちょっと妬けますよ」
「ま、家族ぐるみでね。でもうちの女房と仲良くなったのは、クリスマスくらいからだよ。それまではお互いに避けてた感じだったのに」
「はあ。避けてたってことは、やっぱり奥さんも愛音さんのこと、疑ってらしたってことですか?」
「疑ってたっていうのはちょっと違うと思うけど、お互いに相手に遠慮してたっていうのはあったみたい」
「ふーん。愛音さんが遠慮するのは解るんですけど、奥さんが愛音さんに遠慮するってのは、やっぱり木田さんに何かありますよね」
「ああー。また疑ってるのか?」
「既に手出しちゃったこと、あるんじゃないですか?(笑笑笑)」
「愛音に? 彼女のことはひとみ先生から、よろしく頼むって言われたから、気にかけてるだけだし」
それには博之、渾身の全否定。
「もうそれは分ってますって。愛音さんには、絶対手を出さないって」
「誰にもそんなことしないよ」
「そうですよね。木田さんが気にかける理由は理解出来ますよ。でも、納得いかないんですよ」
「・・・何がだよ?」
博之は恐るおそる聞いた。
「ふふふ」
「何だよその笑い」
「まさかって思うんですけど、木田さんと血つながってたりしません?」
「そんなバカなことないよ」
「じゃ、先生とはキスだけの関係だったのに、どうしてその娘さんが、何十年も経ってから木田さんを訪ねて来たんですか?」
「えっ。それは、・・・もう先生に時間が残ってなかったから・・・」
「それで娘さんが、急いで探すほどの関係だったってことですよね」
「いや、そんなことはないけど・・・」
「もう、ウソが下手ですね。そんなんで浮気してたら、絶対に奥さんにバレますよ」
「だから浮気なんてしないから」
「それも面白くない。あれだけ面白エピソード持ってる人が浮気しないなんて」
「昔の話とは関係ないだろ。お前はまだ現役かもしれないけど」
「そうですよ。まだ、上手に楽しもうと思ってます」
「え? 浮気もするって宣言か?」