隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
博之はうっかり、愛音との関係の深さを暴露してしまいそうになって、言葉に詰まってしまった。
その後、二人はそれぞれの車で大型スーパーに向かい、小原はそこに車を駐車して、博之の車の助手席に乗り込んだ。
「お邪魔します。ここで車乗り移ると、不倫カップルみたいに見えますよね」
「うん。俺もそう思った」
「会社でも最近、そんなふうに思われてないですかね。私たち」
「そうだな。気を付けよう」
「はい」
「・・・・・・」
「何を気を付けるんですか?」
「だよな。堂々としてればいいだけだな」
博之はそこから15分ほど車を走らせて、ネパールカレーの店に入った。
「ビールは飲む?」
「いや、飲みたいですけど、車乗って帰らないといけないので、やめときます」
「だな。カレーだし、ビールって感じでもないだろ。そう思ってここにした」
「この店、好きです。私カレーすごく好きなんですよ」
「本格的なカレーが?」
「はい。家庭的なカレーより、本場のカレーっていうのが好きです」
「じゃ、よかった」
二人のテーブルにネパール人の店員がやって来て、やたら早口で聞き取りにくい日本語で注文を取って行った。
「・・・ところで、本当に旦那さん放っといて大丈夫?」
「まあ、仲が悪くなったりはしませんけど、べったりする気分じゃないですから」
「もう完全に許してるの?」
「許しはしないですけど、もう拘るのはやめます」
「それで、いいのか?」
博之はその話はしないでおこうと思っていたが、やっぱり気になって、つい口にしてしまった。
「今は、まだ実感として感じてないのかもしれません。浮気されたことが」
「あまり考えたくないってこと?」
「そうですね」
「じゃ、今日は何の話がしたかったわけ?」
「特にこれっていうことじゃなかったんですけど、すみません、付き合わせちゃって」
「いやいや。こっちが晩飯付き合わせてる方だから、気にしないで。それにお前と話してると、俺楽しいんだよ」