隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
第27章 深い関係
「木田さん。まだ残られますか?」
小原が着替えて帰宅する格好で、博之のところにやって来た。
「ううん、もう帰るとこだ」
本当はまだ仕事は残っていたが、着替えた彼女がわざわざ様子伺いに来るということは、きっと話したいことがあるんだろうと悟ってこう答えた。
「また、ミーティング? 久しぶりだな」
「はい。いつものいいですか?」
「今日は、ゆっくり付き合うよ」
博之も家に帰っても今晩は一人。ちょうど都合がいい。
「なんか帰りたくない気分なんです」
「そんなこと言うなよ。『じゃ、帰さないよ』って言えないし(笑)」
「すみません。そんな意味じゃないですよ。うちのアパート狭いから、ずっと旦那と一緒にいないといけないんです。それが煩わしいっていうか」
それは、旦那と顔を合わせたくないと言ってるのと同じだった。
「ああ、そりゃ一人になりたい時もあるからな」
「トイレと、お風呂だけですよ」
「風呂一緒に入らないの?」
「今は、病気持ちですからね。一緒にいたくないです」
「でも、晩御飯用意しに、帰らないといけないんじゃない?」
「今日は、旦那が定時帰りの推進日なんで、もう帰ってると思います。だから先にスーパーで買って、勝手に何か食べてくれますから」
それを聞いて、彼女は気分転換を求めてるんだと思った。
「そう、じゃ、これから俺の晩飯に付き合ってくれたり出来る?」
「あ。はい。食べに行きますか」
「よかった。ちょうど晩飯どうしようか悩んでたところだったんだ」
「奥さんは? いいんですか?」
「家帰っても誰もいないから」
「え? ご家族どうかされたんですか?」
「明日受験なんで、また愛音の家に行ってるんだ」
「あ、そうか。・・・へ? でもどうして愛音さんの家に?」
「あ、それは・・・」
「すごく、家族付き合いが深いですね」
「まあ、そうだな」