隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
博之は時間のある時に、“後見人”について、スマホで調べてみた。
【法律上、未成年者後見においては、親権者が遺言で指定した者】と記載されている。
「先生には愛音のことを見守って行くって約束したけど、遺言でそう書かれてるわけじゃないしな。それに未成年でもないし」
【認知症や知的・精神障害で判断能力の不十分な人を保護するための成年者後見】というのもあるらしい。
「あいつはまだボケてないし。天然なとこあるけど、結構しっかり者だし」
【一般に、ある人の背後にいて、その補佐や世話をする人】という記載も見付けた。
「これだな。俺これに当たる。ん? 違うじゃないか。俺は父親なんだ。でも法律上は他人てことになってるし」
微妙な立場に頭を悩ます博之だった。
「ふうー」
ダイニングでお茶を入れながら、妻の知子がその様子を見ていた。
「あなた、愛ちゃんに会って来てからずっと溜息ばっかりついてるけど、何かあったの?」
「いや、相手のお母さんが面倒なこと言ってるらしくってさ。愛音が困ってるんだ」リビングのソファに座る博之は、ダイニングテーブルの方を見て言った。
「嫁姑の確執がもう始まってるのね」
博之はスマホを置いて立ち上がり、お茶を飲みに、知子のいるテーブルの椅子に移動した。
「そうじゃないよ。俺の問題」
「ふふふ、それは大変ね」
知子は博之から、ひとみ先生との間に、隠子がいたという話を聞いた時には、崩れ落ちて泣いた。しかし、博之自身が42歳のその時まで知らなかったと聞いて、ひとみに対する怒りを感じたものの、そのことは口には出さないでいた。
「へえ。保証人?」
「うん。どこまで本気で言ってるか知らないけど、俺が認知さえしてれば、無用な心配なんだけどね」
博之は湯飲みを覗き込み、考え込んだ。
「認知したいの?」
「そういうことじゃないよ」
「私はいいわよ。秋日子(娘)も来年からは中学だし、もう理解出来るから。お姉ちゃんが出来て、喜ぶと思うわ」
「愛音は先生の気持ちを大切にしたいと思ってるし、それは望んでないと思う」
「じゃ、本当に保証人になるんだったら、私も連名でなってあげる」
「ありがとう。愛音も喜ぶよ」