隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「クリスマス・イヴです」
「え!? あの日!?」
思わず、小原を睨み付けるような表情をしてしまったが、それは一瞬で旦那の計画的な行動を疑ったからだった。
「でしょう! 絶対許せないでしょう?」
「プレゼント買いに行かずに、風俗行ってたって! そんなことあるの?」
博之は言葉を濁したが、その旦那はクリスマスのサービス価格や特別サービス目当てで、かなり風俗に通い慣れてると察していた。
「男の人の気持ちはよく解らないですけど、その日は絶対にダメですよね」
「その日だけは、っていうわけでもないけど、それを自分からばらしてしまう心境が、俺には理解出来ないけど」
「木田さんもそういうとこ行かれるでしょう?」
「いいえ! 行きませんよ」
「・・・」
「本当に日本で風俗には行ったことないですよ。海外は別ですけど」
「その方がリスク高くないですか?」
「うん。確かにそうだけど、シンガポール出張の時なんかは、事前健康診断で、性病検査も必要だったりして、何度も受診してるし、今のところは大丈夫だと思ってるけどね」
「旦那、気が小さいから、舌のデキモノが痛くて調べてたら、やばいことになる気がしたらしくて」
「でも、ちゃんと検査して、結果がはっきりしてから、打ち明ければいいのに」
「私が実家に帰ってからじゃ、もう打ち明けられなくなってしまうから、今のうちに打ち明けたみたいですけど。先に『離婚してくれ』って、違わなくないですか?」
「本当に不安で、どうしようもなくなって、一緒に心配して欲しかったとかじゃない? 『助けてー!』て感じで」
「旦那、HIVだったらどうしようかって、不安になったみたいで。そんなことより、その後でも私、抱かれてるんですよ。ナマで」
「ああ、それも心配だよな」
「ばら撒きテロみたいなもんですよ」
「まあ、落ち着こう」
「それが案外冷静なんですよ」
「じゃ、喧嘩はしてないってこと?」
「泣き叫ぶ相手に、何も言えませんでしたよ」