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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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夕日を見ている美穂と言う女

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 高木はコンビニの経営コンサルタントをしていた。委託された経営不振のコンビニを回っているのだ。今日は群馬県を回っていた。3件目のコンビニに行く約束は、午後6時であった。朝の売り上げに比べて、夕方からの売り上げが少ないためであった。
 高木は5時半ごろから、コンビニの駐車場の様子を伺っていた。客の車は4台ほどである。従業員の車が、駐車場の隅に3台止めてある。目の前には道路を隔ててスーパーがある。
朝はスーパーが開店していないために、売り上げがあることが分かる。
 客を装い、店内に入る。台車を押した店員が脇を通るが、無言である。高木はチェックを入れた。陳列に問題はない。ただ弁当類の在庫が少ない。売れ残りを計算していることはわかるが、客にすれば選択のしようがないことになる。6時までには10分あった。高木は前のスーパーに行ってみた。コンビニと同じような弁当やおにぎりがある。それに勝てるには接客より他はないと判断した。
 オーナーは70歳ほどで、店長はその倅であった。挨拶の徹底。『いらっさいませ』の前に、おはようございます。こんにちは。こんばんはを入れる。その間に一呼吸入れる。
『おはようございます。・・いらっしゃいませ』
 ありがとうございますの後には『お気をつけて』を付けるように指導した。コンビニでは客に言葉は掛けないが、弁当を見ている客には『暑いですから梅干し入りのおにぎりなどはいかがでしょう』などとさりげない接客も指導してみた。これは高木も初めて取り入れた考えであった。
 帰るときに、レジに立っていた女性に、高木は驚いた。パチンコ店で会った女性であったからだ。
「こちらで働いているのでしたか」
 彼女は驚いた表情をした。
 名札に谷津美穂と書かれていた。高木はレジの近くにあったガムを取り会計をしながら
「夜勤務ですか?」
 と尋ねた。
「えぇ」
 とだけ言った。
 客はいないので話は続けられたが、迷惑になると思い、話をやめた。店長が
「谷津をご存知ですか」
 と言ったが
「今日親切にしていただいた方です」
 と言った。
タクシーが来たので、高木はそのまま駅に向かった。