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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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「うわっ!」

隣の瑞がよろけ、慌てて近くの木にもたれかかるのが見える。それは一陣の、強烈な風。鋭い一刀の薙ぎ払いだ。
一瞬の出来事。二人を取り囲んでいた禍々しさが、消え失せている。成功した。

「すげ…何今の!」
「犬除けの呪文。いやあ、気持ちよく吹き飛んだね~。効果覿面?」

幼い頃、祖父に教わったものだ。すごいすごいと、瑞が隣で興奮している。

「そんなことより瑞くん、」

颯馬は再び、少女の姿を捉えた。少し先の叢で、晴れ着の少女がこちらに背を向けて屈みこんでいるのが見えた。と、その姿はすうっと闇にのまれるように消えてしまう。颯馬と瑞は、彼女の屈みこんでいた場所まで駆け、そこで見つけた。

「ああ、ここが…」

そこには、叢の中に隠されるようにして、苔むした石が鎮座していた。一抱えほどもある大きさだが、それはあまりに憐れな風貌をしている。

「祠ですら、ない。この石が、彼女のいた証か」

長い年月の間に、祠は朽ち、この御神体だけが残ったのだろう。それも雨風にさらされ、ひどいものだ。あちこち欠け、雨ざらしのままで。颯馬は心が痛んだ。このみじめな石が、これだけが、彼女を現世に留めているのだ。

「幼い命を捧げて魔を鎮めてきた。だけど人々はその幼い犠牲を忘れてしまった。ヒトガミとなった少女は、信仰を力を失い、あの坂に再び魔が這い出る。現代人の負の感情が上乗せされ、魔の力はパワーアップしていく…」

信仰を取り戻す必要があるのだ。昨夜、伊吹の口を借り、少女が言ったあの言葉…。

「にーちゃんら、また来たのか。大丈夫か!」

坂の方から声を掛けられる。昨晩の老人が、懐中電灯片手に近づいてきた。