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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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「どうした?」

目を開けると、薄暗い間接照明の明かりが目に入った。そばに伊吹がいる。

「…え、なに?」
「おまえ、うなされてたぞ」

瑞はソファーに半身を起こして辺りを見渡した。向かいのソファーでは、颯馬が毛布を被って眠っている。今夜は伊吹の家に泊まったのだったか。リビングを借りて眠りについたのは、ついさっきだったような気がする。そばに放り投げてあったスマホを見ると、午前二時を過ぎていた。

「…先輩、まだ起きてたの?」
「水のみに降りてきたら、なんか聞こえたから。汗すごいぞ」
「怖い夢見てました…」

大丈夫かよ、と隣に座って伊吹が言う。

「あの坂で、妖怪にとり憑かれたりしてないだろうな。化け物の夢とか?」
「そういう怖い夢じゃなくて…あの、ひとりぼっちになる夢」

命を失くして身体も消えたのに、魂だけが残って、想いは消えなくて、だけどどうすることもできなかった。

「ありがとうございます。もう平気ですから」

伊吹が冷たい水の入ったコップを差し出してくれる。喉を通っていくその冷たさにホッとする。あの恐ろしいまでの渇きが、夢でよかったと心底思う。

「今でもおまえは、寂しい、ひとりぼっちだって思うときがある?」

空になったコップを受け取ると、伊吹が小さな声で言った。静かな夜の中に溶けた言葉は、どこか不安げに聞こえる。今でも。そこに、二人で辿ってきた時間の長さと重さが含まれていることがわかった。