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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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「その通りだ。妬みや嫉みが、悲しさや苦しみが、魔に引かれて吹き溜まるのだと、祖父はよく言っていた。いまは文明は進化し不便は消えたが、その代わりに増えたのが人間の負の感情だとわしは思う。あいつがうらやましい、あいつが憎い、誰よりも幸せになりたい、蹴落としてやりたい…」

その感情に覚えのない者などいなといだろう。瑞にだって、ある。

「そーそ。うちの神社の絵馬にもさ、ときどきヤバイのがあるんだよ。不倫相手がどうとか、競争相手がどうとか。世も末だよねー。そんでそういう感情をさ、現代人は簡単に他人にむき出しにしちゃうわけ」

颯馬は続ける。

「ツイッターとかのSNSで。ネット上で顔の見えない相手を叩き、面と向かっては言えない鬱屈を吐き出し、それを見てまた悪意が広がり…ってね」

今や人間の悪意は瞬時に拡散されていく。指先一つで。そして、それを目にした者にまで影響を与えていく…。

「いまや町の神々も信仰と力を失い、沓薙ほどの力を持たん」

老人が力なく言い、それを受けて颯馬も悔しそうに続けた。

「力のない神様達は、ひっそりと忘れられて消えていくんだよ。うちの天狗様たちは、氏子さんたちの信仰が深いから、力を持っていられるんだ」

忘れられて、消えていく…。瑞は中庭の狐を思い出す。あの神にも信じて思いやってくれる人がいるから、ああして形を保ち、意思を持って顕現することが出来るのだ。

「もともとヨクナイものがいた坂、弱まった神様の力、溢れる街の負の感情。これらが、魔を呼び寄せる原因になっているということか。神様の力が弱まっているから、何度お祓いしても定期的に同じことが繰り返されてしまうってことか」
「そー。明治の大々的な町を上げての封じも、いまはもう効果が消えちゃってるってわけ」
「じゃあ、いたちごっこじゃないか…」

瑞はそう言ってから、突然冷や水を浴びせられた感覚に振り返った。何か、いる。

「…なんだあれ」
「はい出たよー」

懐中電灯の光に浮かび上がったのは、首が二つある黒い犬だった。ふうふうと荒い息遣い。よだれを垂らし、殺意をむき出しにしている。おぞましい姿。この世のものではない。