【完】全能神ゼウスの神
けれど、魔道界でめいにヘラを失ったと話した時、大人になって初めて泣いた。
(それだけ、めいに心を許して…甘えていたんだ。)
それでも…その時も、声を圧し殺して泣いた。
そんなリカが、今は声をあげて泣く。
ヘラが無事に助かったのに、そんな喜びよりもめいを失った悲しみの方が強く、辛かった。
(時空間に構えた小屋に、やはり閉じ込めて置いていけば良かった!)
(ヘラの元へ行くのを、なぜ止めれなかった!)
様々な後悔が後から後から押し寄せて、噴き出すように嘔吐や嗚咽となってリカの体から吐き出されていく。
「……………だ…。」
リカは咳き込みながら、言葉を絞り出した。
「……ゃ…だ…。」
拳で草むらを叩きながら、思いを吐き出す。
「…いやだ…!」
白銀の髪が、揺れる度に陽の光を跳ね返した。
「甦れ!!私の元に戻って来い!!」
爆発する思いを身体中から吐き出すリカに、跳ね返された光がキラキラと降り注ぐ。
陽の光を纏うリカは幻想的で、どこまでも美しかった。
異空間に存在する、御祓の泉の森。
ここでは、感情を爆発させても許される。
だから、リカはここへ駆け込んだ。
「何が全能神だ!愛する女ひとり救えない、甦らせられねーじゃん!!」
思うままに、負のオーラを吐き出すリカ。
「全てを犠牲にして宇宙を守ってんのに!私の幸せは何ひとつ守れない!!」
そこまで言うと、リカは顔を上げる。
「守るどころか…幸せすら犠牲にしてんじゃん。」
そう呟くと同時に、リカの金色の瞳から生気が失われた。
「私は…なんのために生かされてるんだ…?」
虚ろな瞳で呟いた瞬間、ふわりとやわらかなものに後ろから包み込まれる。
「…私の、ためでしょ?」
聞き覚えのある声に、リカは目を見開いた。
でも、それはここにいるはずのない人の声。
やわらかな虹色の光に包まれながら、リカは恐る恐るふり返り、声の主を確かめた。
作品名:【完】全能神ゼウスの神 作家名:しずか