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オヤジ達の白球 6~10話

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 常連客を代表して、消防士上がりの寅吉が坂上に詰め寄る。
寅吉は20年ちかく東京消防庁で勤務してきた。
災害時に威力を発揮する特別レスキューの隊員として、最前線で活動してきた。
実績を積み重ね、人望も篤く、さてこれからというとき父親が倒れた。
家は代々つづくネギ農家。
家業を継ぐため昨年の冬、消防庁を勇退して故郷へ戻って来た。

 ここまで書けば寅吉は、なかなかの男のように思える。
だが実態は大いに違う。仕事に関しては生真面目だ。
どんなときでも先頭をきって出動し、身体を張り、職務をまっとうする。
だが私生活がとにかくだらしない。
女からの誘惑に弱い。まったくもって弱すぎる。
酒をしこたま飲んでは、男ならだれでもよい好色な女の餌食になって来た。

 そんな生き方が、ついに災いした。
長年連れ添った女房と3人の娘は、東京に残ったまま。
協議離婚の話が進行中で、単身というさびしいかたちの帰郷になった。
全員の顔を見上げ、坂上が自信たっぷり、ニヤリと笑う。
 
 「へへへ。聞いて驚くな。お前さんたち。
 今朝のことだ。
 俺は町内親睦のソフトボール大会の、グランド整備に駆り出された」

 「毎年おこなわれている親睦ソフトボール大会のことだろう。
 それがいったいどうした。
 最近は集まりが悪すぎるので、誰彼かまわず強引に駆り出されているそうだ。
 しかしお前さんは、運動とはまったく無縁のはずだ。
 ソフトボールもろくに出来ないくせに、よく声がかかったなぁ・・・・
 よほど人材が不足しているんだな、お前さんの地区は」