オヤジ達の白球 6~10話
オヤジ達の白球(8)没収試合
「どれ」カウンターの一番奥から北海の熊が立ち上がる。
熱燗徳利を片手に、つかつかと岡崎と坂上のテーブルへ歩み寄る。
北海の熊は土木の現場で重機をあやつっている。
一般になじみのある建設機械といえば、油圧ショベル(ショベルカー)や
ラフテレーンクレーン(クレーン車)などがあげられる。
熊が動いたことで、店内の飲んべェ達も動き始めた。
やがてすべての男たちが、岡崎と坂上の周りに集まった。
不定期にふらりとあらわれ、カウンターで一時間ほど呑んで帰っていく
謎の美女の正体は、ここに集まる飲んべェたち全員の最大の関心事だ。
その正体が判明したとなるとただ事ではない。
「いいだろう。
それが確かなら、今夜のお前さんの飲み代は、俺が全部払ってもいい。
だが、いつものようにガセネタや、嘘だったら勘弁しないぞ。
北海の熊が言うように、お前さんは信用できねぇ。
頓珍漢な情報ばかり拾ってくる。
どうせ今回も眉唾(まゆつば)だろうが、たまには
まぐれで当たることもある。
聞かせろ。全員がもう固唾を飲んで、お前の周りに集まってきた」
作品名:オヤジ達の白球 6~10話 作家名:落合順平