オヤジ達の白球 6~10話
「聞いて驚くな。お前さんたちの期待をついに解明したぞ。
例の謎の美人の正体が、判明した。
どうだ。俺もやるときはやる男だということが、これで証明できただろう!」
「へっ・・・女の正体が判明した?。
よく言うぜ。どうせまた、いつものガセネタじゃねぇのか?」
「一番女に縁のねぇ男が、例の謎の女の正体を解明したってか?
ホントかよ。信じられねぇなぁ・・・」
「なんだお前ら。疑っていやがるな。
本当だとも。俺のこの目がしっかり、たしかに見届けてきた!。
正真正銘のビッグニュースだぜ、今回ばかりは、な」
「それが本当ならたしかにそいつはビッグ・ニュースだ。
何やってんだ、おまえ。
そんなところで水なんか飲んでないで、こっちへ来て詳しい話をきかせろ。
大将も気がきかねぇなぁ。
飲んべェに水なんか飲ませてどうすんだ。
のどが乾いたときは、ビールと相場が決まっているだろう。
大将。俺から一杯、ビールを出してやってくれ」
男が奥のテーブルから、坂上を手招きする。
呼んだのは岡崎真也。こちらも40歳。坂上と同級生の間柄。
岡崎は、自動車部品のゴムを加工している。
ゴムが放つ独特の匂いと機械から発生する高温のため、若い世代から
もっとも敬遠されている職業のひとつだ。
ドンとテーブルに置かれた生ビールを指さし、「遠慮なくやってくれ」と
岡崎がニタリと笑う。
この男も、ふらりとあらわれる例の謎の美人に熱をあげている。
坂上が「じゃ遠慮なく」と毛むくじゃらの右手を伸ばす。
その手を岡崎がかるく制止する。
作品名:オヤジ達の白球 6~10話 作家名:落合順平