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オヤジ達の白球 6~10話

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 「まぁ、まて。あわてるな。まずは乾いた喉を潤してからだ。
 勿体ねぇじゃねぇか。
 注ぎたての生ビールが俺の前にずらりと4杯も並んでいるんだ。
 ぜんぶ呑んでから、仔細をゆっくり話すからよう」

 ぐびりと喉を鳴らし、坂上が生ビールの一杯目を飲み乾す。
中ジョッキが15秒ほどで空になる。まったく見事な飲みっぷりだ。
よほど喉が渇いていたのだろう。
空になったジョッキをテーブルへ置いた坂上の手が、2杯目の生ビールへ伸びる。
その指先を岡崎がぴしりと叩く。

 「おい。おまえも、調子に乗るのもいいかげんにしろ。
 みんなお前さんが、ビールを飲むのを見るために集まっているわけじゃねぇ。
 女の話を聞きたがっているんだ。
 2杯目のビールはあとにしろ。いいから、いいかげんで見てきたことを
 ぜんぶ話せ」

 「市の審判部から、4人の公式審判員が派遣されてきた。
 驚くなよ、おまえさんたち。
 なんとその4人の中に、女の審判員が混じっていたんだ」

 「別に珍しくものなんともないだろう。
 群馬と言えば、女子ソフトボールの強豪県として有名だ。
 去年。福岡から日立高崎ソフトボール部(注・現在はビッグカメラ)へ入った
 上野由岐子ってピッチャーは凄いぞ。
 高卒ルーキーのくせにいきなり、史上初の2試合連続の完全試合を
 やってのけた」

 「それだけじゃねぇ。
 上野は1999年の世界ジュニア選手権で、日本チームを優勝に導いた。
 なんでも10年にひとりの逸材だそうだ。
 そんなすごい女の子がわざわざ九州から、片田舎の群馬まで
 やって来るんだぜ」

 「日立高崎ソフトボール部だけじゃねぇ。
 群馬にはもうひとつ、太陽誘電という強豪チームがある。
 1987年から26年間、1部リーグに在籍しているチームでリーグ優勝は通算6回。
 準優勝も3回。こっちも伝統ある名門チームだ」

 「女子ソフトボールが盛んな背景を考えれば、女の審判員なんかちっとも
 珍しくなんかないだろう。
 ん?・・・・ちょっと待て。その女の審判員というには、もしかして・・・・
 不定期にここへ現れる例の、あの謎の美女のことか。もしかして!」
 
(10)へつづく