黄泉明りの落し子 三人の愚者【後編】
「ルヴェンさんよ」
ニコールの声に、ルヴェンは我に返った。
「ニコールさん……?」
「神の恵みが平等ってんならよ、あのオッサンの様子を見に行ってやってくれねえか。俺は……手遅れなんだろ?」
ルヴェンは、返答に窮した。
図星であった。
「それは、しかし……」
「始めはド畜生、としか思わなかったさ」
ニコールは、苦しげに、しかしハッキリと言葉を継いだ。
「けどな、俺にも、心当たりがあるんだよ。こうなる運命って奴のな」
「……」
「あの野郎も手遅れかもしれねえがよ……あんなオッサンが何もねえとこで一人野垂れ死ぬなんてのは、流石に哀れだろうよ」
「……ニコールさん」
ルヴェンは、スッと立ち上がった。
その眼に熱い涙を溜め込んで。
「必ず戻ります。あなたをこの森から連れ出します」
神父は、自らが元来た方角へと、一気に走り出した。
ならずものは、呟いた。
「それは勘弁しろ、ルヴェンさん……」
作品名:黄泉明りの落し子 三人の愚者【後編】 作家名:炬善(ごぜん)