⑥全能神ゼウスの神
「でも!」
私は受け止められた拳にぐぐっと力を入れ、リカの胸に押し付ける。
「そんな誤魔化しには乗らないわよ。」
私の言葉に、リカとイヴが驚いて私を見た。
「私は、お互いに支え合いたいの。」
言いながら、再び立ち上がる。
「…光らない…めいちゃん、まさか…。」
イヴの言葉に頷き返しながら、再び零れ落ちる証を今度は勇気と自信に変えた。
「フェアリーとしてはもう役に立てない。けど、傍にいれば、喜びは二人ぶん、哀しみは半分こにできるじゃない。」
言いながらリカの胸に飛び込むと、リカが包み込むように抱きしめてくれる。
そして、ふーっと長く息を吐き出した。
「…死ぬかもよ?」
淡々と告げる声は、かすかに掠れている。
『めいを失ったら生きていけねー。』
それは、頭の中でさっきの言葉に自動変換された。
私はリカの背中に手を添えると、とんとんとあやすように優しくその背をたたく。
「なに言ってんの。」
あえて、おどけた明るい声を出した。
「こんだけあなたをしつこく追いかけ回す私が、そんな簡単に離れるわけないじゃん。」
そして身を起こして、リカの顔を下から覗き込む。
「たとえ死んでも、幽霊になってまとわりつくから安心して♡」
すると、リカがぷっと笑みを溢した。
「ストーカー幽霊?」
私は笑い返しながら、リカの胸に拳を当てる。
「またストーカー扱い!?」
わざと怒ったように言うと、リカが喉の奥で笑った。
「ていうか、既に今、幽霊。」
「そっか!」
私があはは!と笑うと、リカがぎゅっと抱きしめる。
「…ちゃんと、祟りなよ?」
冗談ぽく言いながらも、私を抱きしめる腕と声は小さくふるえていた。
「ひどっ!祟るとか、悪霊扱い!?」
私はリカを安心させようと、明るく笑いながらその大きな体を抱きしめる。
そんな私たちを複雑そうに見つめるイヴの視線に気づいていたけれど、私はあえてリカだけを見つめた。