⑥全能神ゼウスの神
幸せの絶頂
「どこもかしこもやわらか…。」
リカが吐息混じりの艶やかな声で、うっとりと呟く。
「…ん…やっ…太いか…ら」
呼吸を乱しながら身をよじると、リカが腰をぎゅっと抱きしめてお腹に顔を埋めてきた。
「甘くてやわらかくて…ほんとマシュマロ。」
言いながら、お腹に舌を這わせる。
「ぁっ!」
ぬるりとした感触に、体の芯が熱くなる。
「めっちゃ感度いいし、声かわいいし。」
妖しく微笑むリカの色香に、体の奥が甘く疼いた。
初めて体を重ねるのに、リカはまるで知り尽くしているかのように私の体から熱を引き出していく。
「ん…ん…」
漏れる嬌声が恥ずかしくて、手の甲を口元に当て、声を押し殺そうとした。
すると、その手首をリカに掴まれる。
「二人だけじゃん。」
言いながら、そっと口元から外された。
「思いきり、声出しなよ。」
そして、深く口づけられる。
私の中で、リカはゼウスの時の無表情なイメージが未だ根強い。
だからこんな情熱的な姿を見せられると、それだけで鼓動が高まり、羞恥と悦びに心と体がふるえた。
「んっ…リカ…」
「ん?」
口づけの合間に名前を呼ぶと、角度を変えながらリカが応えてくれる。
「恥ずかし…」
滑らかな白い頬を両手で包み込んで訴えると、リカの黒い瞳が私を至近距離でとらえた。
「今までの…リカのまわりにいた女性たちと違って…スタイル…悪いし…。」
涙が溢れそうになり慌てて顔を逸らすと、リカもそちらに体を傾け覗き込んでくる。
「関係ない。」
真剣な瞳で射抜かれた。
「愛しいって気持ち、めいで初めて知った。」
苦し気に眉を寄せ、でも恍惚とした表情で私を見つめるリカは、本当に美しい。
「どんだけ触れても、もっと触れたくなるもんなんだな。」
言いながら、私の頬に手を滑らせる。
「でも、触れれば触れるほど愛しさが溢れて幸せで満たされんのに、不安にもなる。」
「…不安?」
思いがけない言葉に訊ねると、リカが頬を染めながら顔を逸らした。
「めいを失ったら…もう生きていけねー…。」
(…え!?)
「…なんて言ったら…ウザい?」
「…リカ…。」
愛しさと喜びが、炎のように立ち上ぼり、全身を駆けめぐる。
あまりの嬉しさに頬がほころぶと、リカが顔を逸らしたまま横目で私を見た。
言ってしまったことを後悔しているような表情が可愛くて、私は思わず破顔する。
「…はぁ…。」
リカはため息を吐くと、そのまま身を起こして私に背を向け、ベッドサイドに腰かけた。
「リカ?」
私も起き上がりながら声を掛けると、リカは長めの前髪をくしゃりと握る。
「…ダサっ。」
(本心、なんだ…。)
リカに本当に愛されているんだと知ったら、嬉しくて…どうしようもなく嬉しくて、涙が溢れた。
「…ひっく…」
しゃくりあげる私を、リカが驚いた様子でふり返る。
「なに?」
珍しく焦った様子で私の肩を掴んだ。
「リカ…好き…。」
「!」
リカが小さくひゅっと息をのむ音が聞こえる。
私の肩を掴む両手に、ぐっと力が籠められた。
「リカ…大好き…。」
涙を流しながらリカの胸に顔を埋めると、リカが力強く抱きしめてくる。
それは加減ができないのか、骨がきしむほど強い。
「んっ…」
痛いけれど、それがまるでリカの愛の強さのようで、幸せが溢れた。
「めい…私も…好きだ。」
再びベッドへ私を押し倒したリカは、先程までとうってかわって余裕のない表情で衣服を脱ぎ捨てる。
「ごめん…抑えきかないかも…。」
覆い被さってきながら、苦し気に囁かれた。
私は返事の代わりに、その逞しい体をぎゅっと抱きしめる。
「リカの、好きにして…。」
耳元で囁くと、密着した体からリカの激情が爆発するように一気に膨らむのを感じた。
「…っ。」
リカは熱い息を吐き出すと同時に、私の首筋に噛みつく。
「ぁっ!」
身をよじった私の体を片腕で抱くと、そのままズボンと下着を一気に剥ぎ取られた。
「ぁっんっ!!」
一番恥ずかしいところに手を差し込まれ、巧みに愛撫されると嬌声が高くあがる。
「めい…かわいい…」
吐息まじりに甘く囁かれながら、耳朶を食まれた。
「ん…リカ…っ」
津波のように襲う快感を更に求めて脚を開くと、すかさずそこにリカが割り入ってくる。
大きく体を開かれて恥ずかしいのに、それすら甘い痺れとなって体の奥から悦びが溢れた。
「すご…。」
リカは熱を帯びた艶かしい声を漏らしながら、私の体の芯に顔を埋める。
「あ…っやっ!」
溢れる悦びをリカに舐め取られる艶かしい水音が室内に響くと、頭も体も甘く痺れ、体には更なる悦びが駆け巡り、どうしようもない快感に高い嬌声があがった。
「リカ…リカ…」
もう思考は停止し、リカを求めることしかできない私は、嬌声混じりにリカの名前を繰り返し呼ぶ。
「めい…好きだよ…。」
私の顔を覗き込み、妖艶に微笑んだリカが深く口づけをしてきたその瞬間。
リカとひとつに繋がる。
「ん…ん!」
舌を絡ませ深く口づけを交わしながら、リカの情熱に何度も貫かれ揺さぶられる。
体の中でどんどん存在感を増していくリカが愛しくて、愛情が噴水のように溢れ出した。
呼吸が乱れ互いにうまく息を吸うことができないけれど、それでも深く交じり合う。
「ぁ…は…っ」
「っは…めい…!」
唇も体も重なり、繋がり、融け合う音が艶かしく室内に響き、より二人の熱情を煽った。
「だい…じょうぶ…?」
頬を紅潮させ熱を帯び潤んだ瞳で私を覗き込みながら、リカが頭をそっと撫でてくれる。
「ん…リカ…幸……せ」
私が笑顔で答えると、リカも汗を滴らせながら微笑んだ。
「私も…。」
そうして微笑みを交わした瞬間、体の芯でリカの欲情がより大きくせり上がったのを感じる。
「ん……っっ!」
リカの黒い瞳が妖しく揺れ、焦点が僅かにぶれた。
そして、天井を仰ぐように体を大きく逸らす。
「ぅっくっ!」
「んっリカ…ぁっ…ぁあ!」
体の奥深くで、リカの情愛が噴き出したのを感じた。
そのことがたまらなく嬉しい私は、リカにしがみつきながらその愛をあますことなく得ようと、溢さないようきつく吸い上げていく。
「…っは…ぁ…っくっ…ふ…」
熱情を搾るようにしめつけられるリカは、小刻みにふるえながら何度も体をひきつらせた。
リカの身体中から汗が吹き出した時、ついに受け止めきれなかった熱情の証が溢れ出し、押し出されるように繋がりも離れる。
「ぁ…やっ!」
小さな音を立てて証が流れ出し、私はそれを堰き止めようとリカにしがみついた。
そんな私をぎゅっと抱きしめたリカは、熱に浮かされた瞳で私を覗き込む。
それから流れ出した証を補うようにゆっくりと唇を重ねてきて、愛を注ぎ直してくれた。
「これが人間ん時にできてたら、子孫を遺せたのにな…。」
私を汗ばんだ胸に抱きしめながら、リカが掠れた声でぽつりと呟く。
「え?」
驚いて訊ねると、リカは大きな掌で私の頭を優しく撫でながら息を吐いた。
「ハーレムの女達とは、勃つんだけど出せなかった。」