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⑥全能神ゼウスの神

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逞しい腕を瞼に乗せながら、ため息混じりに呟いた。

まるで傷ついたような、自らを嘲るようなその言葉に、私はガバッと起き上がる。

「価値、大アリだよ!!リカの正義感と優しさと持ってる力はまさに宇宙レベルじゃない!」

私の反論に、リカは一瞬大きく目を見開いてこちらを見つめた。

けれど次の瞬間、お腹を抱えて笑い出す。

「宇宙レベル!?なんだそれ!おまえの天然も宇宙レベルだな!」

目尻に滲んだ涙を拭いながら、リカが私を見上げた。

「…むっ。」

私はその宇宙のように美しい瞳を真っ直ぐに受け止めながら、頬を膨らませる。

「…ちょっと口が悪くて俺様で、全部自分で背負い込む困ったとこもあるけど、どんな人に対しても平等で公平で誠実で温かいから。そんなリカを、私は尊敬してるの。なのに、価値がないなんて自分を貶めるようなこと言わないで!」

私の言葉に、浮かべていた悪戯な笑みを消すと、リカは真顔で私を射抜いた。

「そっくりそのままそのセリフ、おまえに返すわ。」

「…え?」

リカは、ゆっくりと身を起こす。

それに合わせて、前のめりだった私は、自然にシャキッと背筋が伸びた。

「おまえは私がゼウスだろうと、魔導師長だろうと、一国の王子だろうと、ただのリカだろうと…態度が変わんねーだろ?」

頷く私に、リカはずいっと身を寄せる。

「それは、私に対してだけじゃなく、サタンにも、ミカエルにも、媚びることはなかった。」

(あ、これってさっきも…。)

「愛想笑いしねーのも、からかったらキレて殴ってきたのも、心ん中と実際に口にする言葉が同じなのも、全部おまえが初めて。」

「…それ、さっきイヴも同じこと言ってた…。」

「イヴ?」

リカの眉が、ピクリと引きつる。

「あ、サタン様の真名なの。イブラヒムだから、略してイヴ。」

「…ふーん。」

無機質な表情なのに、怒りが見える気がするのは気のせいだろうか。

「真名教えてもらって、それを愛称で呼べるほど親密になったんだ?」

今まで見たことない暗い笑顔に、私の背筋がぞくりとふるえた。

「私を拒否るのは、その『イヴ』のせい?」

言いながら、ぐいぐい体を寄せてくるリカに耐えきれず、私はそのままベッドに仰向けに倒れ込む。

その瞬間、顔の横にリカが両手を突き、私の動きを封じてきた。

「さっき、プロビデンスの間での空気も恋人っぽかったし…。だから堪らず来ちまったんだけど。」

「…?」

こちらが聞き取れない声でぶつぶつと呟きながらゆっくり覆い被さってくるリカを、また金色の光が包み込む。

「おまえは、誰が好きなの?」

いつになく低く艶やかな声色で問われた私は、即答した。

「もちろん、リカ。」

迷いなく答えると、リカはハッと目を見開いた後、嬉しそうに破顔する。

「ん。」

喜びが溢れる素直な表情に、私の心臓は早鐘を打ち始めた。

あんまりにも可愛いので、私は魅入られたようにジッとリカを見上げる。

すると、リカがやわらかな微笑みを浮かべながら、私を見下ろした。

「私の好きな人は聞かなくていいの?」

「え!?」

思いがけない質問に、素っ頓狂な声を上げてしまう。

「い…いるの…?」

(恋愛したことないって言ってたのに…。)

思わず表情が強張ると、リカが頷きながら私の頬に手を添えた。

「ん。いる。」

そしてゆっくりと顔を近づけてくる。

「…ここに。」

(!!??)

重なった唇に甘く啄まれ、私の思考はショート寸前だ。

「…リカの好きな人って」

「さっきから何度も言ってる。」

ちゅっと音を立てながら、軽い口づけを落とされる。

「めい、おまえだよ。」

「!!」

驚いて口を開けた瞬間、深く情熱的な口づけが始まった。

「やっと、通じた?」

甘く微笑みながら、リカの唇が耳朶を食む。

「おまえが、好きで好きで、たまらない。」

言いながら、その唇は鎖骨をなぞった。

「だから守るために別れようと思ったけど…理性で抑えられなかった。」

ビクッと反れた背中に腕を差し込まれ、私の素肌に唇と大きな掌が触れる。

「…ぁっ…」

「こんな理性が利かなかったの、初めて…。」

思わず漏れた甘い声に嬉しそうにしながら、リカが私のふくらみを口に含んだ。
作品名:⑥全能神ゼウスの神 作家名:しずか