如何なる存念
-辰の刻、江井砦-
「兵糧は、何一つ見つからなかったのか?」
英明が血相を変えたので、砦内の捜索結果を報告した兵が後ずさりする。
「それらしき蔵は、全て空で御座いまして…」
側に控えていた家臣が慌てだす。
「へ、兵の兵糧は、各々が持参した分しかありませぬ」
「承知しておる」
「敵の蓄えを頼みにして、小荷駄など連れてきておりません」
「解っておると、言っておろうが!」
声を荒げた英明の目前に、広間に飛び込んできた使い番が跪いた。
「殿、大変でございます!」
「何事じゃ! 騒々しい!!」
「と、砦が…敵の大軍に囲まれました!!!」