如何なる存念
-深夜・子の刻、江井砦に一番近い美衣砦-
煌々と篝火が焚かれる中、小一は 立ち働く兵を見守っていた。
「もう、半刻もあれば、片が付きそうじゃのぅ」
兵に指示を与え終わった石原佐吉が、呟きに反応する。
「早馬での御指示に従い、江井砦の全ての兵と兵糧と弾薬を、この砦に移動させておりますが…」
「さすが佐の字。仕事が早いわ」
「─ 如何なる御存念なのでしょう?」
小一は、佐吉を横目で見た。
「明日の朝、早川の兵が江井砦を奪いに来る」
「ま、まさか…安々と敵に、明け渡すおつもりで…」
「率いて来た兵ごと たわけ殿を砦に閉じ込める」
「…人質に?」
問い掛けられた小一は、左の人差し指で下唇を擦った。
「身代金は…迷惑料込みで、砦を2つと言う所かのぅ。。。」