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如何なる存念

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-夜・亥の刻、森柴家の本城-


「兄者、こんな刻限に呼び出しとは 何事じゃ?」

 奥の間の戸を開けた弟の森柴小一に、森柴籐吉は座る様に促した。

「早川が挙兵準備を進めているそうじゃ」

「…間者の知らせか?」

 部屋に入り、戸を後ろ手で閉める小一。

 目が合った黒畑孝高が頷く。

「我が配下の者が、先程」

「たわけ殿は…」

 小一に限らず森柴家では、早川家現当主の英明を「たわけ殿」と呼んでいた。

「─ 如何なる存念なのじゃ?」

「恐らく、家督を継いだ箔付けかと」

「国境近くの江井砦を、襲うつもりか?」

「恐らくは。」

 腰を降ろした小一は、上座の籐吉を見る。

「早急に援軍を送らねば」

「砦からは、兵を引くでよ」

 顔を顰めた小一の視線が、孝高に移動する。

「…何をするつもりじゃ?」

「灸を据える好機かと」

「まさか、あの策を!?」

「ご明察」

 籐吉の顔に、笑顔が浮かぶ。

「小一は、話が早くて助かるわ」

「─ で ワシは、どうすれば良いのじゃ?」

「まずは…江井砦に、早馬を出してくれや。」

作品名:如何なる存念 作家名:紀之介