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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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ブドウのような味の恋

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裕子は娘の事を話し始めた。
美大を卒業する年に妊娠したの。相手は同じ洋画家の学生。彼は画廊の後押しでパリに行くことになったの。私は彼を引きとめたくて妊娠した。でも彼は妊娠は嘘と言ってパリに行ってしまった。私はその彼に復讐のためかもしれない、彼との間に出来た子を生むことに決めたの。
未熟児だったわ。私は彼を愛していたの。彼に未熟児の子を知らせる事は出来なかった。
彼には一流の画家になって貰いたかった。
麗と名づけたの。歩く事も遅かった。やがてなかなか喋らない事が解った。
小学校に入る時は哀しかった。
特殊学級ですから・・絵を教えたわ。上手くはならなかった。
生活にも困るようになって、彼に援助を頼もうかとも思った。
でも出来なかった。
彼の人生を大切にしたい気持ちが強かった。
だから自分の絵を売る気になったわ。努力したわ。
麗がいたから、そんな苦労は何とも感じなかった。
スタートが最低なら、喜びも大きいってことを麗に教えてもらった気がしたわ。
口を曲げて話す言葉が少しづつ解るようになった時は嬉しかった。
麗の意志がはっきりと伝わって来たから。
知能が少しづつ回復してくると、麗は自分を恥ずかしいと言いだしたの。
悩んだわ。義務教育は終えたけれど、いつかは麗は自分で生きて行かなくてはならない。