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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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ブドウのような味の恋

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裕子は飲もうと手にしたワインのグラスに涙を落した。
グラスに波紋が出来た。
この施設から引き取ったのがいけなかったのかもしれない。
急な山の斜面での作業を見ていたら、転げ落ちてしまうような気がして
でも麗には幸せだったのね。自殺したわ。20歳だった。
「つまらないお話し」
裕子は波紋の消えたワインを飲んだ。
私にこのような話をした裕子が愛おしく思えた。
食べ終えたパスタの皿を下げてくれたのもこの施設の人のようであった。
たったこれだけの仕事であっても、ここの人たちには出来た事の歓びがあるのだろうと私は感じた。
いまの裕子に必要な事は拒み続けて来た彼以外の男との愛かもしれないと感じた。
それが麗を忘れることになるかもしれない。
裕子自身がこれからの人生を幸せに生きて行かなくてはならないだろう。
「記帳した時、ぶどう棚の女の感想言ってくれたわね。『淋しさが漂うエロチシズム』って、覚えてはいないでしょう」
「言ったような気もする」
「図星だったわ」