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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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ブドウのような味の恋

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両毛線で1時間ほどで足利に着いた。
そこからはタクシーに乗った。
山に向かって車は進んだ。道は狭くなった。
「ここでいいです」
裕子はそう言った。
私が料金を払おうとしたが裕子が払った。
歩きながら
「私がお願いしたのですからここでの会計は私がするわ」
と言った。
私は素直に応じることにした。
ロッジ風のレストランは満席状態であった。
順番を待つ間土産物を見ているうちに、何か様子が普通ではないことに私は気が付いた。
しかしそれは裕子に訊ねる事も出来なかった。
テーブルに座ると
「少しでいい、ワイン飲んで欲しいの」
と裕子は言った。私は頷いた。
5月の風が気持ちよく山の風を運んでいた。
やや無表情な顔をした女性がワインをテーブルに置いた。
「もう前の話になるけれど、私の娘ここで働いていたのよ。何となく解っていると思うけれど、ここは知的障害者の施設なの。ワイン作って自立しているのよ」
「そうですか」