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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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ブドウのような味の恋

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裕子とのメールのやり取りが半年位経ったとき、裕子はぜひとも行って欲しい場所があると言って来た。
それまでのメールのやり取りの中でも、雰囲気としてお互いが魅かれるものはあったのだろうが、愛とか好きとかの言葉はなかったのである。
無論私が既婚者であるからであろう。
「なぜあなたは葡萄の絵にこだわるのですか」
と私が質問した答えが、その返事のようであった。
私は極力逢うことは避けなければいけないと考えていた。
しかし、私の質問の答えだと言うのであるから、行かない訳にも行くまいと考えた。
私は承諾した。
裕子は新幹線で小山に着いた。私は駅で彼女を迎えた。
やはり都会に住む女性はセンスが良いのだろうか、裕子は人ごみの中でも1度見ただけなのに直ぐに解った。彼女は私が解らないようであった。
「日馬さんこっちです」
「お久しぶりです。三枝さんですね」
どちらも多少の不安もあったのかもしれない。お互いが名字を読んで確認した。
「足利にあるの、ワイン工場よ」
「そうですか、私はアルコールは苦手です・・・」
「お話ししたい事があるの」
「ええ、それなら聞き上手かもしれませんよ」