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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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ポジティぶ なんだから (最終話の前に第9話追加)

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第8話 これでも高級車なんだから



高級車はいい。
本当にいい。
何もかもいい。
ボスの車に乗せてもらうことが多くなって、本当にその良さが解ってからは、僕もドイツ車を買うようになった。
ただし、中古車なんだけど・・・。

「ビーエム(BMW)買ったのか?」
ボスが僕の新しい車を見て言った。

「ええ、思い切ってもう1台、買っちゃいました。ベンツワゴンにエラーが出るようになったので」
「そのベンツは何万キロ走った?」
「実は19万キロ超えたとこです」
「ほう、さすがドイツ車。20万キロ達成しないのか?」
「ええ、もう10年近く乗りましたから、次の車検までのつもりです」

ボスの乗る車には到底及ばないけど、僕も何とかカッコの付く車を大事に乗っている。

「最近は軽自動車でも200万以上するらしいですよ」
「誰がそんなオモチャ買うんだ?」
「新車にこだわる若い子は、オプション追加して、そんな額になるそうです」
「へえ、それならもうちょっと排気量の大きい車、買えるじゃないか」
「目線が軽で止まってるんでしょ」
「なるほどな。金がない割りに、毎日コンビニ弁当食うみたいなもんか」

普段、お金の計算が大雑把な割には、上手な使い方にはこだわる人なんだから。

「今度のビーエムは、どこで買ったんだ?」
「ネットオークションです」
「お前、そんなんでまともな車買えるのか?」

中古車をうまく買うなんて、ボスには縁のない話なんだろうけど、なんだか怒られそうな気がする。

「この車種は国内最大サイズの高級SUVなんです。新車だと1,000万越えですけど、7年落ちで買いました」
「確かにデカすぎる」
「でも前のオーナーさんすごくいい人で、陸送前に『オイル交換しときますね』ってメールが来てたんで、手元に届いて整備記録見たら、エンジンオイル、ブレーキオイル、ミッションオイルに加えて、ブレーキパッドまで新品にしてくれてたんです」
「じゃ、その人、間違いなくセレブだな。金に余裕のある人の親切行為だ」

ボスはこんな人とばっかり付き合ってるから、当たり前の反応なんだから。

「僕、結構ついてると思います」
「高級車だから、そういう人に当たる確率が高いってことだろ」
「そうですね。前のベンツは、50万値引きしてもらって、おまけに30万相当のアルミホイールセットまでもらいましたし」
「総額いくら払ったんだ?」
「ベンツは200万弱でした」
「あのEクラスワゴン、そんな値段で買えるのか?」
「はい。程度もすごくよかったですよ」

僕は(どうだ。すごいでしょ)て、感覚で話した。

「それなら、このビーエムはいくらなんだ?」
「陸送費と車両登録代入れて、総額169万円です」
「お前・・・・・・早く、新車の軽、買える様になれよ」

ボスは僕の涙ぐましい努力を、不憫に思ったようなんだから。