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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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ポジティぶ なんだから (最終話の前に第9話追加)

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ボスくらいお金があって時間も自由で顔が広ければ、愛人なんか簡単に作れると思うのに、そんな素振りは全く見せないんだから。
でもちょっと、疑っちゃうよね。
あれはボスと二人でバリ島に行ってた時の話なんだけど・・・
それは翌月、その島で日本人の大きなパーティーがあって、約5000人がやって来る企画があったんだ。

「ここに店を出そう」
「こんなローカルな場所で、土産もの屋出して、客来ますかね」
「ふっふっふ。主催者にここに店を出すことを伝えて、クーポンを配らせるんだ」
「おおー。そうと知ってこの場所を見ると、いくつかのホテルに近いし、三叉路の信号待ちの突き当りと来りゃ、バッチリ目立つじゃないですか」
「そうだ。だからこの小屋を目立つように改装する。お前デザイン考えてくれ」
「任せてください。そういうの得意です」
「店の名前何にしようかな」
「あ、それ考えときました。“Di SiNi(ディ・シニ)”でどうでしょうか?」
「なんだそれ?」
「インドネシア語で“ここで”という意味です」
「“Di SiNi(ここで)”か・・・いいな」

それでその店を短期間でオープンさせることになったんだけど、棚を買ったり、エアコン取り付けたり、周辺の島々まで回りながら、品質に拘った民芸品や工芸品、天然塩やスパイス、スナック菓子なんかも仕入れて回ったんだ。
僕はその1カ月間で日焼けして、もう真っ黒。
かなりインドネシア語も話せるようになって、プロのバイヤーだと思われるようになっちゃった。
そうなると値切れば値切るだけ安く買えちゃうんだ。
領収書を作成してもらって、「店の名前は“Di SiNi”」って伝えると、ここ(相手)の店の名前を尋ねてると勘違いされて、毎回笑われて印象深く覚えてもらえた。

「ビジネスプライスって安いんですね」
「これだけで1万円しないのか。店の他に倉庫がいるな」
「ホント。物価が日本と全然違いますよね」
「100円でお腹いっぱい食べられる店もあるからな。ここでならお前もセレブ気分が味わえるじゃないか」
「そうですよね」

「じゃ、女の子ナンパしてみろよ」

僕はこのボスの意外な一言に驚いたんだ。

「お金にものを言わせたら簡単かもしれないですけど、そのあとの面倒見るわけに行かないし・・・」
「愛人作れって言ってるんじゃないぞ」
「この店の看板娘をスカウトしようじゃないか」
「なるへそ! それ面白そうですね」

で、二人でいろんな場所で知り合う女性を、楽しく物色し始めたんだけど、それがなかなかイイ娘が見つからないんだ。
20歳以上で探してたんだけど、バリ島ってちょっとカワイイと思う女子は、みんな10代中頃まで。もうちょっと年を取ると、もうおばさんの雰囲気になっちゃうみたい。

「もう帰国しないといけないのに、見付からないですね」
「コーディネーターに探させるしかないか」

その晩僕らは、いつもお世話になってる現地コーディネーターと食事をして、その人が僕たちを、夜の街に案内してくれたんだ。
そしてバーで飲んでたら、そこのウェイトレスに一人、ものすごい美人がいた。
僕はすぐに声をかけさせられた。

「日本語勉強したくない?」
「したい」
「今度日本人相手の土産屋を出すんだけど、店長やってみない?」
「やりたい」

ボスも納得。
彼女の名前はデヴィ。
ジャワ島から出稼ぎにやって来ていた、英語が話せる20歳だった。


「好きな娘を選んでください」

夜も更けて、コーディネーターは帰国前の僕たちを、更にディープなエリアに連れて行った。
ボスと何度もバリ島に来てるけど、こんな場所は初めてだ。
僕はガラス窓の向こうのひな壇に陳列される、大勢の女の子達をじっくりと見た。
ボスも同じように見てたけど、僕らには分っていた。
カワイイ娘もいるけど、ものすごく若いに決まっている。
なんて欲望の世界だ。
ボスはどうするんだろうと、思っていると、

「私は妻を愛してますから」

これがボスなんだから。