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月とコンビニ
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オクターブ!‐知らない君に恋をした‐

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み「それは社会人よ」
白凪「めんどくさいんだねー」
み「ガキはいいなぁ」
白凪「ガキやないし」
み「ガキやろ」
白凪「ちげえし」
み「煙吸わんの?」
白凪「吸ったときないし」
み「白凪」
白凪「なに」
み「なんでいつもここいんの?」
白凪「そりゃぁ、まあ、みっちゃんがいるからだし」
み「友達付き合いが煩わしいってか?」
白凪「んー」
み「お前、可愛いな」
白凪「知ってるし」
み「あー、友達いねぇわ」
白凪「なぐさめろ教師」
み「痛いの痛いのとんでいけー」
白凪「ざーつー」
み「放課後に、音楽室にいたってな」
白凪「なんで知ってんの?」
み「葛城先生が見たって」
白凪「ああ、じじい」
み「帰宅部の活動は帰宅すること」
白凪「うっせー、暇だー」
み「からおけしてたのか?」
白凪「うんにゃ、ぴあのいじくってた」
み「弾けんだ」
白凪「うんにゃ」
み「そうだよなー」
白凪「誰でも弾けるよーなの、楽ちんなやつ」
み「かえるのうたか?」
白凪「ねこふんじゃったじゃい」
み「どんなん?」
白凪「ねこふんじゃったい、ねこふんじゃったい」
み「ああ、それ」
白凪「むかし、友達ん家に遊びに行ったときに習ったんだわ」
み「友達いたのか」
白凪「小学校んときだし、ものすごく仲良しってわけじゃなかったけどねー」
み「名前は?」
白凪「みっちゃん!」
み「…」
白凪「え、まっちゃん? いや、むっちゃん?」
み「マ行だな」
白凪「そうなんだよー」
み「で、久しぶりに?」
白凪「そう、唐突に。町田さんの三つ編み眺めてたら猫! もう猫だなって!」
み「町田の三つ編みは握りつぶしたくなるな」
白凪「なるなる。なんか昔を思い出してー。自分ちには楽器なんてなかったから憧れてたんだー。がらじゃないのに、けっこ熱心に遊びに行った」
み「めっちゃんちにか」
白凪「そう、もっちゃんち」
み「へぇ」
白凪「なんか、いろいろならったよ。オクターブとか」
み「なにそれ」
白凪「覚えてない」
み「あ、携帯」
白凪「ん?」
み「変えたのか?」
白凪「んー」
み「いいなー」
白凪「みっちゃんさ」
み「あいふぉんとぅえるぶな」
白凪「買わないし」
み「けち」
白凪「あたしに彼氏ができたらどうする?」
み「できないだろ」
白凪「できたらだよ」
み「ご祝儀あげるよ」
白凪「ふーん」
み「遊ぶのもいいが勉強もしろな」
白凪「してるじゃん」
み「白凪は…、そうだな」
白凪「あー楽しくないなぁ、がっこ、楽しくない」
み「そうかー」
白凪「なんなんだろうなー、もう、なんなんだろうなー」
み「お題やろうか?」
白凪「お題?」
み「生きるためのさ」
白凪「なんじゃそりゃ」
み「目的を持って生きろってことよ」
白凪「まあ、いいや。どんと来い」
み「そうだな」
白凪「んー」
み「…彼方を見つめて」
白凪「彼方?」
み「遠く離れた場所のことだ」
白凪「さすが、現文専科」
み「わかるだろ」
白凪「いや、そうじゃなくって、詩的だなって」
み「ふん、お前の彼方ってどこだろうな」
白凪「…わかんない」
み「頑張れよ」
白凪「おう」

 煙草の煙が目に染みる。



 昼休み。教室。机に突っ伏して眠る絢斗。お弁当を食べる奏手と菓子パンを齧る遊。

奏手「ということは、いま携帯持ってないのね」
遊「そうなんだよ」
奏手「馬鹿じゃないの?」
遊「馬鹿なんだよ」
奏手「で、いつ?」
遊「なにが?」
奏手「一緒にさがしたげるんでしょ?」
遊「さっすが奏手。本日、放課後、雨天決行!」
奏手「帰る前ね」
遊「じゃないと起きないのよ」
奏手「大丈夫、私が起こしたげるから」
遊「ぎゃー、お手柔らかにね」
奏手「まかして。ギリギリのラインだから、暴力と目覚ましのギリギリのライン」
遊「プロだ」
奏手「そうなんだ」
遊「そういえば、今朝さあ」
奏手「あん?」
遊「絢斗が様子変でさあ」
奏手「あん」
遊「昔話ばっかしてんの」
奏手「いつくらいの?」
遊「まちまち、小学校だったり、中学校だったり…」
奏手「へぇ」
遊「昨日さ、どうだった?」
奏手「どうだったって?」
遊「ほら、俺とわかれた後さ」
奏手「え、あ、別に」
遊「そうかぁ、じゃあ、やっぱりあれかなぁ」
奏手「あれって?」
遊「ほら、白凪さんの。おかしかったでしょ」
奏手「そうね」
遊「なんか、めずらしかったなって」
奏手「けど、ほら彼女、美人だし。私に似て」
遊「あ、いやいや、奏手は、トップ50…」
奏手「あ?」
遊「あ…」
奏手「ほれ」
遊「あれれ、その手はなあに?」
奏手「趣味悪いのよね、あんた」
遊「いや、これは俺の血と涙と鼻水の結晶で…」
奏手「さいってーだよ」
遊「いや、ちょっと」
奏手「さいってーだよ」
遊「…」
奏手「さいってー」
遊「はい、どうぞ」
奏手「はい、ありがと」
遊「でも、奏手も脚がすらっとのびて綺麗だよ」
奏手「それも、ありがと」
遊「…絢斗に言われたらかお真っ赤なのにね」
奏手「はあ!?」
遊「いやだって、そうでしょ」
奏手「ちげーし、だいたい、絢斗は、んなこと言わないし!」
遊「顔、真っ赤だよ?」
奏手「…」
遊「きゃー!」
奏手「ぬんわー!」
遊「分りやすいんだからもー、絢斗も奏手も」
奏手「あああああんたもね」
遊「ご名答」
奏手「だって長い付き合いだもの」
遊「で、なにがあったのさ、昨日。あんな絢斗を見て、動揺しないはずないんだから」
奏手「聞いちゃった」
遊「白凪さんのこと?」
奏手「いや、私とあんたに恋人ができたらどうするか」
遊「俺のも聞いたのかー」
奏手「いや、まあ、私も知ってたし」
遊「で?」
奏手「詳しくはこたえなかったけど、いまの時間が大切だって」
遊「ありゃ、それはこちらとしても手が出しづらくなるな」
奏手「私もそう思った」
遊「他には?」
奏手「猫にあったかな」
遊「猫?」
奏手「絢斗にとってはどうか分からないけど、私にとってはひとつの想い出なの」
遊「…それかな?」
奏手「いや、普通に白凪さんだと思うけど」
遊「そうだよねぇ。名前聞いてもピンとはきてなかったみたいだけど」
奏手「昔話かぁ」
遊「初恋」
奏手「え?」
遊「初恋がどうとか言ってたな」
奏手「なんだ、なんかもう答え出てんじゃん」
遊「鈍いふりするのも辛いね」
奏手「ほんと」
遊「初恋」
奏手「私、初恋が続いてんだー」
遊「あら、奇遇だね。俺もだよ」
奏手「わかりやす」
遊「おたがいさまでしょ」
奏手「戦況を読むなー」
遊「俺は基本的に背中押すスタンスだから」
奏手「あんたはね。こんなもの作っちゃうくらいだし」
遊「健気な努力だよ」
奏手「あーあ、好きだ、ばか」
遊「おー、言っとけ言っとけ」
奏手「好きだー、好きだー」
遊「俺もだー」
奏手「あー、もう! 馬鹿だなぁ!」
遊「まったく、罪つくりな奴だよ。絢斗」
絢斗「んんー」

 心の内を吐露するも、主人公は夢の中。教室は二人のもの。



放課後。雨音。少し薄暗い教室。絢斗、遊、奏手の影。

遊「整列!」
奏手「イエス、サー」
遊「時刻は」
奏手「一六三○であります」
遊「目標」
奏手「黒のあいふぉんいれぶんです」
遊「捜索範囲」
絢斗「あー、えーっと…」