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月とコンビニ
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オクターブ!‐知らない君に恋をした‐

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奏手「どうするって別に変なことしてないし、普通に話しかければ」

 と奏手の喋っている途中で二人の手を掴み猛ダッシュで駆け出す絢斗。その勢いでスマホを落とすが、そんな音を聞き取る余裕などなかった。

奏手「ちょ絢斗!?」
遊「どうしたよ絢斗っ」
絢斗「わっかんね! 帰るぞ!」
遊「いや最初から帰るつもりだけどさ」
奏手「絢斗今日変だよっ!?」

 猛ダッシュで校門まで走り抜けた。

奏手「絢斗、白凪さんが気になるの?」
絢斗「ええっ、そんなんじゃないって!」
遊「いやいてぇよ、急に飛びのくなって」

 いきなり切り出してきた奏手に異常に驚いて反応する絢斗。それが遊を学校の塀と絢斗でサンドウィッチする形となった。

奏手「うちのクラスだからなんとかしてあげよっか、ははは」
遊「いやいや白凪さんは人気たけぇぞ? やめとけやめとけ」
絢斗「だからちげーってば」

 絢斗をからかいながら買い食いやゲーセンなど、寄り道しながら帰る三人。遊だけが逆方面になる交差点で別れ、途中まで絢斗と奏手の二人で帰ることになった。

奏手「絢斗さー、遊とか、私とかに恋人ができたらどーするー?」
絢斗「は? え? 奏手おまえ彼氏できたの?」
奏手「いるわけないっしょ! もしもだって、もしも」
絢斗「あー、そうね。焦ったわ」
奏手「へ、どうして?」
絢斗「さすがにさ。遊もだけど、奏手だって彼氏ができたら、そっちに使う時間だって必要になってくるだろ? そしたら、こんなふうに適当に遊んで、適当にくっちゃべったりする時間も減ってくんだろうなって」
奏手「ふーん、そっか」

 静かに歩く二人。

絢斗「おい、そっかって。続きは。黙るなよこんな話すっからなんか気まずいだろ」

「ギニャアアア!」
「うわあああっ!」
 急に上がった猫の叫び声に、驚いて声を上げる二人。

絢斗「やっべ、しっぽ踏んじまった!」
奏手「はぁっ!? 気をつけなさいよ!」

 追ってくる猫から全力で逃げる。

絢斗「そんなとこで寝てんじゃねーよぉぉ……」
奏手「ぷっ」
絢斗「あん? 何笑ってんだよ」
奏手「きゃあ」

 飛びかかってきた猫から身を挺し、奏手を守る絢斗。
 このとき、奏手には小学生の頃の、公園で少年に猫から守ってもらったときの思い出が被っていた。

絢斗「いってーーーっ」

 絢斗の顔をひっかいた猫は、恨みを晴らせたのかトコトコと歩いて帰っていく。

奏手「あーあ、だっさい傷」
絢斗「……うるせ」
奏手「はいはい、絆創膏持ってるから、ちょっと待って」
絢斗「いいよ」
奏手「だめだって」

 ペタペタと何枚も絆創膏を張られる絢斗。

絢斗「ねぇ。多くない?」
奏手「……完璧」
絢斗「ヘタクソ」
奏手「っはぁ?」
絢斗「……さんきゅ」
奏手「あのときと同じだね」
絢斗「? あのとき?」
奏手「んーん。いーの。なんでもないっ」
絢斗「なんだこいつ」
奏手「じゃあ、私こっちだから」
絢斗「おう、また明日」
奏手「うん」

 分岐路で互いに少し歩を進めた。

奏手「絢斗!」
絢斗「なにー」
奏手「守ってくれてありがとっ♪」
絢斗「へいへい」

 奏手は、とてもいい笑顔だった。絢斗はそれを見てはいないが……。



 そして、ベットに転がり、スマホの電源を入れようかどうか悩んでいる白凪季稲。机の上にもピンクのスマホを置いたまま。



 黒瀬絢斗は帰宅して、気が付く。

絢斗「ああああああ!! スマホ落としたあああぁぁぁぁ!!! あーあぁーぁーぁーあーぁあー……」

 床に突っ伏して悔し涙が一滴落ちた。



朝。公園。白い吐息。リフティングをする遊。響くボールの音。
絢斗が歩いて公園に入ってくる。

遊「お」
絢斗「わりぃ、待った?」
遊「待ったわ、ほいよ」
絢斗「おっと」
 いつものことのようにパスを始める二人。
絢斗「さむくね?」
遊「この時間だもの」
絢斗「はえーよ、まじはえーよ」
遊「いつもよりは遅いけどな」
絢斗「へいへい、寝坊したのはあっしです。わるーござんした」
遊「絢斗は時間にルーズすぎるんだよ」
絢斗「そんなことないわ」
遊「…」
絢斗「視線がいたい」
遊「お前の親友は誰よ?」
絢斗「お前」
遊「熟女好きって知ってんのは誰よ?」
絢斗「お前」
遊「はじめてのおかずを知ってんのは誰よ?」
絢斗「お前」
遊「熟女じゃなかったな」
絢斗「お前…」
遊「俺はお前を知ってるよ。時間にルーズだ」
絢斗「否定ができない」
遊「でも、携帯ぐらい出ろよなー」
絢斗「あ、そうそう、携帯なくしたんだ」
遊「は?」
絢斗「家帰ったらねーのよ」
遊「やばいじゃん」
絢斗「大丈夫、もう涙は流したから」
遊「何が大丈夫なのか分かんないよ」
絢斗「何とかなるさ!」
遊「心当たりは探したか? 携帯会社に連絡したか? 悪用されたらどうすんだ?」
絢斗「…」
遊「…」
絢斗「何とかなるさ!」
遊「ならないよ」
絢斗「そんなことより」
遊「切り捨てたなぁ」
絢斗「初恋って覚えてる?」
遊「初恋?」
絢斗「うん」
遊「俺の?」
絢斗「うん、いつよ?」
遊「そうだなぁー」
絢斗「うん」
遊「…幼稚園のときかな」
絢斗「ちっさ!」
遊「でもそんなもんよ。初恋なんて」
絢斗「大切か? それって大切か? 相手の顔って今でも思い出せるか?」
遊「何さ、いったい」
絢斗「今でも好きか?」
遊「…」
絢斗「今でも、そいつのこと好きか?」
遊「…うん、少なくとも嫌いにはならないよ」
絢斗「そういうもんかー、そういうもんだよなー」
遊「だからなんなんだよ?」
絢斗「ちょっと昔のこと思い出してさ」
遊「へぇ」
絢斗「…いや、思い出したいのかも」
遊「…」
絢斗「すまんな、なんか朝から興奮して」
遊「熟女で抜いてきたんだろ?」
絢斗「なんで知ってんだよ!」
遊「お見通しなわけよ」
絢斗「きもちわるっ!」
遊「初恋か、そういえば知らないなぁ」
絢斗「いずれ話すよ、お前には」
遊「長い付き合いだからなぁ」
絢斗「別に悪いことじゃねぇだろ?」
遊「まあな」
絢斗「お前といると楽しいんだよ」
遊「いろいろやったしなぁ」
絢斗「給食の牛乳を隠して、教室に変な匂いさせたりさ」
遊「自分の席を自分で投げ捨てて『俺の席ねぇから』ってやったりな」
絢斗「春海先生も口説いたよなぁー」
遊「春海先生かわいんだもんだって」
絢斗「部活もやめた」
遊「奏手とつるむようにもなったな」
絢斗「奏手と繋がっては無いけどな」
遊「まだか?」
絢斗「まだな」
遊「どん引きだ」
絢斗「男子トーク、男子トーク」
遊「お前も分かりやすいな」
絢斗「なんて?」
遊「いや、なんもない」
絢斗「きになるやつぅー」
遊「…いま何分?」
絢斗「え? あんねー」
 絢斗、携帯電話を探す。
遊「あ、お前、携帯ないんだった」
絢斗「あ、そうだわ」
遊「まあ、まだ大丈夫かな」
絢斗「ああ!」

 朝の公園にボールの音が響く。



 学校の片隅。喫煙所。けむりかおる。煙りをふかすみっちゃんの隣で、スマホを片手に座り込む白凪。

み「だるい」
白凪「なにが?」
み「授業」
白凪「おい教師」
み「教師も人間よ」
白凪「さぼればいいじゃん」