短編集22(過去作品)
胸の高鳴りが最高潮に達する。耳鳴りが心臓の鼓動に反応するかのようだ。期待と不安で、感情は麻痺してしまいそうだった。
――誰もいない――
そう感じた時、今までになかったはずの安堵感が押し寄せてきて、残念ということよりも、暖かさが戻ってきた身体に私は安心感を覚えたのだ。
――よう子はこれで助かる――
ここに来れるはずのないよう子、私の出張直後のケガにより病院で寝たきりになってしまって、口も聞けないよう子……。
たとえ聞かされたのがたった今だとはいえ、ひと時の広島での「迷い」が私を苦しめ、最後は安堵感に変えてくれた。
「白いシーツ」
よう子のベッドの横で毎日見続けるだろう光景、これで心置きなく必ず治ってくれるであろう、よう子を見守っていくことができると感じた……。
( 完 )
作品名:短編集22(過去作品) 作家名:森本晃次