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二度目に目覚める時

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――自殺菌なんて、本当は存在なんかしないって思っていたけど、やっぱり存在したんだな――
 自殺したわけではないのに、まわりからは自殺にしか見えない。そう思ってバカな自分の肉体を覗きこもうとしたその時、
「うわっ」
 目を覚ましたではないか。
――じゃあ、今の俺は一体なんなんだ?
 これがもし夢でないとすれば、自分の身体に帰り損ねた魂ではないか。しかし、では自分の身体を今支配しているのは誰なんだ?
「ああ、よかった。目を覚ましたんだね? 自分が分かるかい?」
「いいえ、俺は一体誰なんでしょう?」
「これは記憶喪失になっている。やっぱりかなりショックが大きかったんだ」
「俺は、二度目が覚めるので、今がその二度目なのかも知れない」
 そう言って、昇は魂だけになった自分を見つめている。その顔には勝ち誇ったような表情があり、だが、その一方寂しさを隠しきれていない。
――ゆりかは、やっぱり俺のものなんだ――
 と、この男は思っている。中にいるのは博だった。
――俺がゆりかと別れた時、誤って死んでしまった。いや、二度目に目を覚ますと思っていたからだ。でも、目が覚めなかった。俺は死んでしまった。自分の意志でもなく。俺はこの身体でゆりかを抱いた。そして、この身体を俺のものにする――
 そう言っているのが聞こえた。
 昇はなぜか開き直りを感じていた。
「じゃあ、俺は亜季を俺のものにするために、誰かを探しに行くか? そのターゲットには同じ日を繰り返していると思っている連中の中から探すことにしよう」
 と、自分の身体を乗っ取った憎き相手である博に対して言った。
 その表情は、これ以上ないと思えるほどの勝ち誇った表情を浮かべていたが、それは痩せ我慢でしかない。
――本当に痩せていて、我慢強いやつを探すことにするか――
 それこそ、精一杯の勝ち誇った感情を表に出す思いだったに違いない。
――自殺菌――
 そんなものは、本当に存在などしていないのだろう……。

                 (  完  )



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作品名:二度目に目覚める時 作家名:森本晃次