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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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旧説帝都エデン

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 雪兎が地面を蹴って天に飛翔する。大蛇も一歩遅れてその身体を大きくくねらせ雪兎に襲い掛かる。
 大蛇の頭がまるで槍のように雪兎に狙いを定め一直線に攻撃を仕掛けてくる。空中にいる雪兎にはそれを避けることは物理的には不可能な筈なのだが、雪兎は間一髪のところで空中でバク転を決めて見せて、大蛇の攻撃を華麗に交わした。
 しかし、大蛇もそれだけでは終わる筈もなく、すぐに次の攻撃を仕掛けようと身体をくねらせ、またも雪兎に襲い掛かろうとした。
 だが大蛇の視界から雪兎の姿は消えていた……。いったいどこに行ったというのか?
 雪兎は大蛇の頭の上にいた。そして、何かを呟き服の袖から取り出した御札を大蛇の頭に張り付けると、地面に降り立ちすぐに大蛇から走って離れた。
 突如、一片の雲すらなかった空に雷雲が立ち込め大蛇の頭に雷光が落ちた。
 大蛇は地面に平伏し大きな身体を痙攣させている。
「紅葉くん、蛇が戻るから蜿くんから離れてくれるかな?」
 紅葉は雪兎に言われるままに蜿から離れた。
 それを見計らって雪兎が指で印を組むと大蛇はまるで吸い込まれるように蜿の口からまた体内に戻って行った。
 蜿がゆっくりと身体を起こし、雪兎を睨みつけこう言った。
「てめぇ、荒っぽいことすんじゃねぇよ、俺が死んだらどうすんだよ!!」
 雪兎の顔は笑っている。
「この方法が手っ取り早い方法だからね」
「だからって、直接呪いをぶっ叩くことねぇだろーが」
「でも、だいじょうぶ、帝都に異変が起きない限りは、1年間くらいは発作も起きない筈ですよ」
 蜿は雪兎に近づき彼の胸倉を掴んだ。
「呪いを直接、叩いたんだからだいじょぶじゃねぇだ……ろ」
 蜿の身体から力が一気に抜け彼は地面にへたり込んでしまった。
「あらら、やっぱり蜿くんの生命の源である呪いが弱ってしまったから、発作が起きない代わりに身体能力が著しく低下してしまったようだね。蜿くん、1年くらいは急激な運動は控えるようにね」
「……ふざけんな」
 蜿の意識は次第に薄れて行き、雪兎の笑顔だけが残像として残り、そのまま意識を失った――。

 蜿蜒が目を覚ますと彼は自分の病院、帝都病院の院長室のソファーの上で横になっていた。
「……普通ソファーじゃなくて、ベットの上に寝かせるだろ」
 突然、院長室をノックする音が聞こえた。
「さっさと入って来い!!」
 院長室のドアが開くとそこには慌てた様子の看護婦が立っていた。
「院長先生、時雨さんが重症で自ら歩いていらっしゃいました」
「あっそ、直ぐ行くからちょっと待ってもらってろ」
「……わかりました」
 看護婦は少し不満があるようだがあえて口答えもせず、ドアを必要以上に強く締めてこの場を後にして行った。
 蜿は窓辺に行き空を見た。まだ日は高い。
 蜿は身体を少し伸ばしてみた。まだ少し身体が重く感じるが気に止めるほどでもない。
 そして、蜿は患者の元へと向かって行った。普段と変わらぬ蜿の日常――あのことがまるで白昼夢だったかのように何事も無く時間が過ぎて行く……。

 躯 完