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古代湖の底から

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「さっ、みんな、白鳥座ヨロシオマッ星へ帰還するための準備に掛かろう」
 2000年の眠りから醒めた四人、みんないたって健康であることを確認したキャプテンが第一号令を発した。
「キャプテン、了解です」
隊員たちはすかさずレスし、テキパキと動き始める。
 まず最初にやるべきことは、兎にも角にも円盤機の詳細な位置確認だ。

 それから30分間テキパキと調査をし、それを終えたボーヤが早速概要報告の口火を切る。
「現在地は、天の川銀河の恒星サンの一惑星にいます」
「うん、なるほど、それで?」
キャプテンが表情を変えずに、さらなる詳細情報を催促する。ボーヤはそんなことは合点承知の助だ。「あいよ」と小さく呟いて……。
「我々は2000年前の作戦通り小さな島国に存在する湖、その水深約100メートルの底に着陸しております。だけど長い歳月で泥の中に機体が埋まってしまっていると推察されます」
以上の情報を得たキャプテン、「そうか、まずは軽く震動させ、機体に被った泥を揺すり落とせ」とアーネゴに指示を発した。
ちょっと見掛けは気位高く、生意気そう。そんな女性パイロットが胸に手を当て、まるであらためて忠誠を誓うように、――「ヨロシオマッ星!」と。
 あとは格好良くコックピットに座り、人差し指を高々と突き上げ、「セルフ洗浄始動!」と発す。

 2000年ぶりに見たアーネゴの身のこなし、「ヨッ、カッチョイイぜ!」とアンチーヤンから声が飛ぶ。
「からかわないでよ」
 アーネゴが文句を付けたようだが、その瞬間だった、時空貫通円盤の機体はガッガッガッとバイブレーターのように震動し始めた。これで泥や絡まった藻を振り落とすことは可能だ。

 2000年の時の流れ、宇宙においては一瞬。だが自然界ではありとあらゆる事が起こる。
 途方もない長い時間の経過の中で、機体は汚れ、その上錆や傷みが生じ、やがて朽ち果てて行く。これが通常のプロセスだ。
 だが、このケースはどうだろうか?
 機体は宇宙で最も安定し硬質な金属、つまりダイヤモンド以上の硬度を持つ立方晶窒化炭素(cubic carbon nitride)で作られている。2000年程度の歳月ではまったく経時変化をみない。
 泥や汚れを取り払いさえすれば……、もうピッカピカ。新品の状態に戻る。
 機体のセルフ洗浄を終えて、全員の気持ちもスッキリと。そのせいか、新たなやる気もふつふつと湧いてきた。

「この青星はどんな星なのか、もっと克明に調べてくれ!」
 これから始まる活動のために、キャプテンが矢継ぎ早に要求を出す。むろん、隊員全員は興味津々だ。
 それを受け、早速アンチーヤンは湖底から探索浮きを水面上へと浮上させる。さらに、そこに内蔵されている測定ドローンを飛ばし、あらゆる自然環境データーを採取する。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊