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古代湖の底から

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 真っ赤な火の尾を引きながら、幸いにもその湖畔に観測された生物の集落に落ちることなく、まさにジャボーンと。
これと同時に巨大な水しぶきが上がる。それはまさに水面に大輪の花を咲かすがごとくだ。
 一方、この出来事を目にした、まだまだ進化を遂げていない漁民たちは、赤く燃える空からの落下物に腰を抜かしたことだろう、と推測される。

 されどもヨロシオマッ星人にとっては、そんなことはどうでもよいこと。未開生物は昆虫のようなもので、どこ吹く風で、アーネゴからは「無事着水致しました」と報告がある。
 それからすぐにボーヤたちが乗る空飛ぶ円盤は、ユラユラと水中を揺れながら湖底に軟着陸。
まったくの計算通りだ。そしてその結末として、自然水道の入り口にパカッと円盤機体をもって蓋をしてしまったのだった。

 もし誰かがこのブルースター、そう、青星と呼ぶ星の地上から夏の夜空を見上げたとするならば、ドッカと横たわっている乳白色の天の川を見渡せる。
 そのパノラマは明らかに直径5億光年の天の川銀河によるものだ。
 さらに焦点を合わせて行けば、北から南へと大きく翼を広げ、飛翔する白鳥が観察できる。
 その尾の部位に、この青星からは1、400光年の距離があるにもかかわらず、よりキラキラと青色に輝く星がある。
 なぜなら青星の恒星:サンより20倍以上大きな巨星であるからだ。
 その星はデネブと呼ばれ、白鳥座の星群の中で、最も明るい恒星だ。
ヨロシオマッ星はそのデネブの数ある惑星の中の一つ。文明は高度に発展している。

 その最たる科学技術は時空を貫通することができることだ。
並の常識では、距離は点と点を結ぶ直線の長さ。一見そのようだが。
 しかし、もし時空の場、つまりそこに歪みがあるならば、話しは変わってくる。

 たとえば、ほどかれた着物の帯、真っ直ぐに伸ばされて置かれてあれば、その両端のA点とB点は実に遠い。
 だがくるくると巻かれた帯の両端は近い。
 もしロール状の帯を、厚み方向にA点からB点へと貫通できれば、距離ははなはだ近いものになる。
 すなわちヨロシオマッ星人は宇宙にある時空を重ね合わせ、貫き通すテクノロジーを開発した。

 このように自然科学がとてつもなく発展している。その結果、この世から距離という概念をなくしてしまったのだ。
 もちろんこの時空貫通技術は宇宙全般の高等生物に伝搬し、イッチョカミ星人もそれを戦闘に駆使している。
 ただ、この貫通テクノロジーには一つ難点がある。それは不活性な水中では使えない。言い換えれば、水中おいては時空は歪まず、貫通のための扉が出現しないのだ。
 水隠れの術においては、宇宙最高の性能を備えた空飛ぶ円盤であっても、水中ではただの金属盤に戻ることになる。要は無力化してしまうのだ。

 イッチョカミ星人にここまで追われてくればもう背に腹は替えられない。そこで連中にも苦手な水。
 そう、このウィークポイントも飲み込んで、キャプテンから決断が下された。隠れん坊しようと。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊