古代湖の底から
今回もボーヤは胸に手を当てヨロシオマッ星と締め括った、わけだが……、この話しの段階では何が言いたいのかよくわからない。これにイラッときたアーネゴが睨み付け、せっつく。
「アンタ、男の子でしょ、ズバッと結論を言いなさいよ」と。
ボーヤはこういう流れで叱られることには慣れている。そのせいかいつもの調子で「へへへ」と笑い、ここはやっぱり白鳥座男児、その鳩胸、いや、スワン胸を前へと突きだし、己が思うところをまだまだ続ける。
「このフライング・ソーサーを、小さな湖の底にある地下水道、その入口のポイントに、もし正確に沈めることができれば……、つまりですよ、私たちのこの円盤で入口に栓をすることとなり、水の流出を止めることができます。そうすれば水の逃げ場はなくなり、結果、水深はより深くなります」
ここまで語ったボーヤは、ここであらためてコーワイ、アーネゴ、アンチーヤンの三人の正面に向き合い、堂々と自分が考えた戦術を提案するのだった。
「だから、この機体で栓をして、湖の奥底深くに隠れましょう!」と。
ボーヤは明らかにドヤ顔だ。
しかし、考えてみれば、まったくその通りだ。
小さな湖の深甚(しんじん)なる底で、不活性なH2Oの厚い層に覆われて、静かにしていれば、レーダーにも感知されない。たとえ高等生物のイッチョカミ星人であっても、ヨロシオマッ星人のこのクルーを見つけ出すことはできないだろう。
「うーん、なーるへそ!」
キャプテンたちは声を上げ、パチパチとボーヤにビッグハンド。
しかし、感心してる場合じゃない。一刻の猶予も許されないのだ。
「背後に山が迫り、当然谷は深い、その北から二つ目の湖に致しましょう。ボーヤが提案するように、もし栓ができれば、時間とともにさらに水深が増すことが期待できます、――ヨロシオマッ星!」
作戦責任者のアンチーヤンから同意があった。これを受けて、「ヨシ!」と腕にゴリッと力こぶを膨らませ、キャプテンから最終号令が掛かる。
「青星の豆粒レークで、水隠れの術、――作戦実行!」
このような経過を経て、ヨロシオマッ星人の戦闘員が乗る時空貫通円盤機は大気圏へと突入した。