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古代湖の底から

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 振り返れば、大宇宙を真っ二つに分けた戦い。しかし、恐れることは何もなかった。というのも宇宙最先端技術を駆使し開発された、トリプル光速ビーム砲が搭載された時空貫通円盤機で参戦したからだ。
もちろん善戦に善戦を重ねた。最後に、イッチョカミ星人を銀河系にある小さな青い惑星まで追い込んだ。
だが、イッチョカミ星人はその星のもっと小さな惑星の裏側、そこに存在するクレーターに身を潜めた。
 ここはチャンスだ。一気呵成に穴埋め戦法で攻め込んだら、他のクレーターに隠れていた100機以上のトカゲ自主再生型の小型戦闘機が飛び出してきた。
 その武器である粘着ベロをピッピッと出し入れさせながら、ボーヤたちのフライング・ソーサー、空飛ぶ円盤に突然襲い掛かってきたのだ。
 まさに多勢に無勢。これが切っ掛けとなり、形勢が逆転した。

「ここは時間稼ぎをしましょう」
 戦術に長けたアンチーヤンがキャプテンに進言する。これを聞き入れた百戦錬磨のコーワイ、この状況を鑑みて決断を下した。
「ヨッシャー! ここは無理に戦うことはない、チャンスを待とう。それではイッチョカミ星人が不得手とする水隠れの術で、Go!」
 このキャプテンの命に全員はすかさず――ラジャー(Roger)と返した。そしてすぐさま水隠れ工作の準備に掛かった。
まずボーヤは上空からの、この青星の映像を中央制御室にある大型スクリーンに映し出した。そして自信を滲ませ、思うところを滔々(とうとう)と述べた。

「このブルースターの表面はほとんど海で覆われています。だけどここに四方海に囲まれた島があり、その真ん中あたりにポツポツポツと三つの小さな湖があります。その中で南へと広がる湖は少し大きいですが、めちゃくちゃ浅そうです。だけれども北の二つは山に囲まれていて、イッチョカミ星人には絶対気付かれないほどの小粒です。それと奇妙なことに、水が流入する川はありますが、水が流れ出て行く川は見当たりません。ということは……」
 この緊急事態に、話しがここまで長いと誰しも苛(いら)ついてくる。「おいおいボーヤ、俺たち観光旅行してるんじゃないんだから、もうちょっと簡潔に話せよ」と、アンチーヤンから早速のクレームが。

「はい、そのように致します」
 ボーヤは一旦そう答えたが、やっぱりこれは大事な情報と思い直し、相も変わらずトロトロと続ける。
「これは推察でありますが、湖底に、西にある大陸側の海へと地下で通じている――自然の地下水道があると考えられます。どうもこの構造によって、湖の水量の収支バランスが取られ、一定の水位が保たれてるようです。だから……、ヨロシオマッ星!」
 どうもこの白鳥座のヨロシオマッ星人は、喋(しゃべ)くりの最後に「ヨロシオマッ星」を付ける癖がある。理由は、母星への忠誠を表すためのようだ。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊