古代湖の底から
だが、このやりとりを間近に見ていた作戦責任者のアンチーヤンから、これも相も変わらずのことだが、早速活が入る。
「おいおい、お二人さん、じゃれ合ってる場合じゃないぜ。思い出してみろよ。2000年前に俺たちはこの湖の底に隠れることにしたんだぜ。そしてやっと今目覚めたんだよ、幸運にもな。さあ、しっかりしろよ」
ボーヤはどうしっかりしたら良いのかわからないが、うーん、そう言えば少し思い出してきた。
あの戦争の負け状態から時を飛び越えて、今回現世回帰を果たすことができた。これこそ九死に一生を得たようなものだ。
それにしても、2000年も睡眠を取ることにしたのは、なぜ?
ボーヤはもっと詳しく思い出そうとし、額に手を当てる。その仕草を見て取ってか、キャプテンが全員の前にキリリと立つ。
「いいか、この状況になった理由は、我々は宇宙戦で、七色トカゲ座のイッチョカミ星人を追い掛けて、この星までやって来たんだ。そしてここの上空の宇宙で反撃に合い、この湖の底に隠れた。そして2000年の時を待つことにしたのだ」
キャプテンの回顧に、ボーヤは「ああ、そうでしたね」と一つ一つ頷き、徐々に思い出すのだった。その反応を確認し、キャプテンが続ける。
「2000年という時間、生物にとっては結構長いスパンだよな。たとえ宇宙のならず者のイッチョカミ星人であっても心変わりするだろう、そう、その間にヤツらは、戦いはムダだと気付き、戦意も冷めるだろうと算段したからだよ。だがその結果を、我々はまだ知らない。これは2000年前の一つの賭けだったが、期待通りほとぼりが冷めていることには違いないから、それが確認できたら……、さあ、白鳥座の母星、ヨロシオマッ星に帰還しよう!」
キャプテンの言葉は全員に希望を与えてくれるものだった。アーネゴもアンチーヤン、そしてボーヤも胸にぐっと込み上げてくるものがある。新たな決意で拳をぎゅっと握り締めた。
というのも、四人はここに至った過程を完璧に思い出したからだ。
確かに、あの時、イッチョカミ星人が宇宙空間テリトリーの現状変更を強引に推し進めていた。この無謀を見兼ねた宇宙平和同盟の総裁、クジラ座のマッコー星人のヤッチャロカ氏が声明を発表した。すべての星人は規範に従い、イッチョカミ星人の無謀な行動の阻止にあたれ、と。
この任務はもちろん白鳥座のヨロシオマッ星人にも回ってきた。ナンデモイヤダー星人やいつも優柔不断なヌラリヒョン星人もブツブツと小言を言っていたが、元々気の良いヨロシオマッ星人、二つ返事で、連中に灸(やいと)をすえてやりましょ、と一発オーケーした。
結果、この戦闘クルーに白羽の矢が立ち、勝って来るぞと勇ましく、と華々しく戦場へと送り出された。そんな挙げ句の果てに、今ここにいる。