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古代湖の底から

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されども、こんな真実を知らされても、恋慕はさすが作家さんだ。
「〈Truth lies at the bottom of a well.〉じゃなく、〈Truth rise from the bottom of an ancient lake.〉ってことかな」と英語を混ぜての感想を一節。
 うーん、これではみんなに分かりづらいだろうと日本語で、「普通西洋では、真実は井戸の底にある、って言われてるけど、私たちの場合は『ancient lake』、そうよ、古代湖の底から蘇ったってことね」と感慨込めて講釈する。

 しかし、表情は……、やっぱり唖然呆然。
 一方哀歌といえば、「あらら、私たちのご先祖さまは七色トカゲ座のイッチョカミ星人だったの。お母さん、長年の謎が解けたわ。だからいつも首を突っ込むのよ。だけど坊やにはもうイッチョカミしたらダメよ」ときっちり念押しし、あとはケラケラと笑う。これにボーヤはニッコリと返すが、えらい独占欲の強い女と出会ってしまったものだと、これからの夫婦生活、妻のイッチョカミ攻撃を心配する。

 こんなボーヤの危惧を察してか、ベテランパイロットのアーネゴが割って入る。
「もういいんじゃないの、お互いに。かって戦争をしていたヨロシオマッ星人のボーヤとイッチョカミ星人の末裔の哀歌さんが結婚することになり、そのお祝いにと、あなたたちの親戚が琵琶湖を救ってくれるのだから、目出度し目出度しだね。二人仲良くヨロシオマッ星で暮らすことよ」
 な〜るほど! これで全員の心は和み、みんなの顔に笑みが零れる。

 その時だった、窓の外に見える無人円盤機がサーと音もなく動き始めた。それからあっと言う間に、地球、いや日本の琵琶湖を目掛けて飛翔して行った。
 地上はすでに夕暮れ時、西の空は茜色に染まってる。そして北の琵琶湖はそれに映え、ぐるぐると波打つ渦を巻き続けている。
「あっ、隕石だ!」、「飛行機が墜落して行くぞ!」、「いや違う、UFOだ!」
 人々が驚きの声を上げる中、ただただ一点を目指して、未確認飛行物体が一条の真っ赤に燃える尾を引きながら落下して行く。
 いや違う、大気圏を自ら突き破り、極限に精度良く降下しているのだ。
 それが湖面に到達するのに、さほど時間を要さなかった。そして目にも止まらぬ高速で、渦の中心へと突入。そして吸い込まれて行った。
 もちろん大きな湖水の反発が。その水しぶきは100メートルもの高さに立ち上がっただろうか。
 そう、その証を誰もが目撃した。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊