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古代湖の底から

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「皆さん、我がヨロシオマッ星人の空飛ぶ円盤に、ようこそ。またボーヤ、ウエルカム・カミングバック」
 キャプテンとアンチーヤン、そしてアーネゴはボーヤたちをこころよく迎え入れた。
 それからそれぞれによる簡単な自己紹介。それが終わるのを見届けた操縦士のアーネゴがいつになくお淑(しと)やかに指示を出す。
「さあ、皆さま、出発致しましょう。自分の席に座って、シートベルトをしっかりお締めくださいまし。あっとワンちゃんも、お願いね」
 これに恋慕が「シートベルトって、こんな宇宙最先端の技術を駆使した円盤でも、やっぱり締めるんですね」と目を丸くしたが、この感想は捨て置き、作戦責任者のアンチーヤンが「さっ、白鳥座帰還、急がねばなりません」と急かせる。
「わかってます」と全員指定されたシートに座り、ギュッとベルトを締め込む。
 これを見届けた後、キャプテンが「シュッパーツ!」と声を張り上げ、やっぱりドラがガーンガーンと打ち鳴らされる。

 それにしてもこの飛行物体は、まず地球の大気圏100キロメートルから離脱し、宇宙空間へと抜け出す必要がある。
 そのためには、可能な限り引力の影響を排除しなければならない。
 スーと機体を浮き上がらせた。それからは『G』、重力加速度が掛かり、身体がシートに押し付けられる。徐々に増してきている。しかし、意外にスムーズだ。
 なぜなら、『G』による身体への負担を最小限にするためスパイラル・アップ飛行を実行しているからだ。すなわち螺旋(らせん)階段を登るように上昇しているのだ。

 されどもこの動力源は何なんだろうか? 地球人なら誰しも知りたいはず。
 それは三つの装置を使ってエネルギーを得ている。
 一つは重力・反重力装置。二つ目は時間をエネルギーに変換するタイム・コンバーター。
 そして三つ目は、デフォメーティブ・ヒート・アブソーバーを使用し、時空の歪みから生み出される摩擦熱を取り入れているのだ。
 これらはもう2000年前となるが、当時の宇宙の最新技術である。
 そこから創出されたすべてのクリーンな動力を場面場面で使い分け、また合体させたりし、宇宙空間を自在に飛翔する。そのためか動きに自由度があり、迅速でパワフル。
 そんなフライング・ソーサーに掛けられたナノチューブの網、現在地球上では最も強靱な糸で編まれた物だが、上昇とともにヘリコプターからは放され、かつ絡まった糸はブツブツと切れて行く。

 機体は宇宙で一番硬度のあるキュービック・カーボン・ナイトライドで作られてる。したがってキズ一つ付かない。
 このようにして琵琶湖の湖面から一つの飛行物体が噴煙も噴かさず、クルクルクルと螺旋の軌跡を残し、天空へと駆け昇って行ったのだった。


作品名:古代湖の底から 作家名:鮎風 遊